「GOOD DESIGN AWARD 2019」で「PLAY RING」が初のBEST100を受賞

December 28th, 2019
鈴野 浩一
建築家
PLAY DESIGN LAB
プレイデザインラボ 事務局
今回は、前回レポートさせていただいた「Tokyo Midtown DESIGN TOUCH」と同時開催された、2019年度グッドデザイン賞受賞展「GOOD DESIGN EXHIBITION 2019」にて展示された遊具「PLAY RING」についてご紹介したい。


 

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グッドデザイン賞とは


グッドデザイン賞は、デザインによって私たちの暮らしや社会をよりよくしていくための活動として、1957年の開始以来、シンボルマークの「Gマーク」とともに広く親しまれてきた。その範囲は、製品、建築、ソフトウェア、システム、サービスなど、私たちを取りまくさまざまなものごとにまで広がっており、かたちのある無しにかかわらず、人が何らかの理想や目的を果たすために築いたものごとをデザインととらえ、その質を評価・顕彰している。

 

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「GOOD DESIGN EXHIBITION 2019」にて展示された


 

BEST100を受賞した「PLAYRING」


「GOOD DESIGN AWARD 2019」では、PLAY DESIGN LABの作品3点が受賞した。その中でも「PLAYRING」は初のBEST100に選ばれた。
 
トラフ建築設計事務所の鈴野浩一氏とPLAY DESIGN LABでつくった鉄製遊具だ。

 

このデザインは、3つのリングの組み合わせでできており、正面・横・斜め・後ろと、角度によってリングの見え方が変わる不思議なオブジェでもある。360度様々な方向から遊びはじめることができ、斜めに配置した大きな面は使用方法を限定していないので、滑り降りる坂にも、駆け上がる山にもなり、表裏がないことで、垂直のネット部分では、子どもが両サイドから顔を合わせながら遊ぶ事ができるなど、子ども自身が遊び方を発見できる新しい発想の遊具となった。

 

鉄製遊具というと「ジャングルジム」、「鉄棒」、「滑り台」と決まった形状が定着しており、デザイン面においても具象的なモノが大半を占めていた。そこで「PLAYRING」は従来の遊具にはない独特の形状を特徴とし、3つのリングとネットのシンプルな構成でありながら、見る角度によって遊具として様々な印象を与え、子どもたちの自由な遊びを創造することができる。

 

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3つのリングが、見る角度によって異なった数に見えるよう配置し、子どもの好奇心を引き出す。



 

 

「PLAYRING」誕生の背景


近年の幼保環境では、特に都市部の保育園を中心に、園庭がないところが増えている。遊具を設置するにあたりスペースを確保できないケースが多く、遊びの満足感を得ながら、どこまでコンパクトに抑えられるかが課題となっていた。

 

2つの大きなリングと1つの小さなリングを組み合わせてできた「PLAYRING」は、360度どの角度からでも遊具に入っていけるデザインになっており、コンパクトでありながら、子どもたちが思いきり遊ぶことができる遊具として誕生した。また、複数並べることで更に遊びの幅を広げることも可能となっており、現代の幼保環境の課題に合わせた遊具となっている。

 

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近年の幼保環境も考えてデザインされた。



 

 

「PLAYRING」に込めたデザイナーの想い


「外国の遊具はなんか自由だなー」

 

鈴野氏は様々な国に行く度に、日本の公園に置かれている遊具は、決まった要素をただ置いているだけと感じていたという。
「PLAYRING」は、子供が遊んでいる時だけではなく、遊んでいない時間も多いので、それが彫刻のようであったり、風景として考えてみたりということがきっかけとなった。

 

風景や彫刻という意味では一見幾何学な円3個だが、見る角度によっては円が消えたりと、一つずつ発見していくことができ、360度どこからでもアクセスできる。子どもが自由に考えて遊び、滑り台だったら「下から登ってきたらダメ」ではなく、そこからも登ることもできる「余白のスペース」をなるべく持たせたいと思った。

 

自分の居場所を見つけるような、そういった遊び方をしてほしいと願っている。