発達が気になる子どもに寄り添う運動あそび 〜わくわくサーキットあそびブックから〜

March 19th, 2018
前橋 明
早稲田大学人間科学学術院 教授 / 医学博士
「わくわくサーキットあそびブック」は、低年齢の子どもたちの成長の基礎づくりとなる室内の運動あそびを紹介したブックレットである。

今回、プレイデザインラボでは、この冊子を監修された早稲田大学人間科学学術院教授、前橋明氏に、子どもの発達を促す室内の運動あそびについてお話を伺った。

 

 

<わくわくサーキットあそびブック 監修 / 前橋 明>

医学博士。早稲田大学人間科学学術院 教授・日本幼児体育学会会長。
専門は、子どもの健康福祉学。『幼児体育・理論と実践』『生活リズム向上大作戦』『あそぶだけ!
公園遊具で子どもの体力がグングンのびる!』等、著書多数。

 

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「わくわくサーキットあそびブック」


※表紙画像をクリックすると、PDFをご覧いただけます(ファイルサイズ 約9MB)


 

 

発達障がい児の機能訓練としても有効な「サーキットあそび」


「サーキットあそび」は、コース上にいろいろな運動課題を設け、スタートとゴールを同じ位置にすることで、繰り返し行うことができる回路状のあそびです。コースの流れの中で、いろいろな運動を行うので、遊びながら自然と体力や運動能力が高まっていきます。

室内で行う「サーキットあそび」は、低年齢児だけでなく、発達障がい児の機能訓練の活動としてもとても有効です。安全に十分な配慮が必要な発達障がい児は、どうしても運動する機会が少なくなってしまいます。しかし、屋内であれば、安全性に配慮して、集中して運動させることができます。

また、「サーキットあそび」は、子どもたちの運動能力に応じて、コースを作り替えることができます。運動能力に差がある子どもたちをいっしょに遊ばせるときは、コースを途中で2つに分け、選べるようにするとよいでしょう。コースは、難しい課題と易しい課題をつくります。

発達障がい児は、揺れたり動いたり、活動する位置が高くなったりすると、恐がることが多いので、遊具は転んでもケガをしないくらいの高さにして、ぶつかっても痛くない素材のものを使用しましょう。子どもたちの体力レベルに合ったコースで楽しく運動あそびが経験できると、繰り返し挑戦するようになります。

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 【ホールで行うサーキットあそびの例】


 

 

発達障がい児には、まず感覚器官を刺激する訓練を


人間は、指や目などの感覚器官から受けた刺激を、知覚神経を介して脳で認知します。そして、脳で情報を選択・整理し、判断したことを運動神経を介して筋肉に伝え、運動を起こします。これを繰り返すことによって、感覚器官とそれに応じてからだを動かす筋肉や関節の連携がスムーズになり、目的に応じた動きができるようになります。しかし、発達障がい児は、このような「感覚統合」に問題がある場合が多くみられます。
発達障がい児の運動訓練は、まず、情報を入手する五感を刺激して感覚器官をみがくことから始めましょう。感覚器官の中でも、特に皮膚を通して感じる触覚へのアプローチが基本となります。「ここが、おててだよ」「ここが、ひざ」等と、からだの部位名を伝えながら、その部分を握ったり、なでたりしてみてください。子どもは、それぞれの感覚器官の名称や位置、大きさ、役割を理解すると、自分のボディイメージ(自分のからだの部位や大きさがこれくらいという実感)をつかむことができ、身体認識力が身についてきます。そして、運動の範囲を広げ、用具や遊具などを用いて遊ぶことで、物体と自分のからだの位置関係を把握して安全に動く空間認知能力が育っていきます。

 

 

発達障がい児に適した「感覚統合」を促す運動あそび


「感覚統合」で大切なのは、「触覚」と「前庭感覚(バランス感覚)」、「固有感覚(運動感覚)」です。この3つの感覚を適切に働かせ、からだ全体を協調させるように促していきましょう。

「前庭感覚(バランス感覚)」は、重力に対してまっすぐに立って姿勢を維持したり、からだのバランスを取ったりする感覚です。「固有感覚(運動感覚)」は、筋肉や関節の中で得る感覚を総称したもので、それを感知することで力の加減をする運動感覚のことです。「固有感覚」は、個別で訓練することは難しいですが、「前庭感覚」や「ボディイメージ」と関連づけてアプローチしてみましょう。

 

それでは、「感覚統合」の訓練になる具体的なあそびをいくつか紹介します。

「触覚」は、からだの部位を伝えながら、その部分をなでたり、動かしたり、風や水を当てるあそびから始めます。違う触感のものに、ふれさせてもよいでしょう。そして、水あそび、ボールプール、砂あそび等の感覚あそびに発展させていきます。

また、末梢神経の触・圧刺激は、大脳の活動水準を高め、学びにも良い影響をもたらします。マットレスやふとんの間に子どもをはさみ、指導者が上から軽くおさえ、触・圧刺激を与えてみてください。押すときは、手足などの末梢部から、少しずつ刺激を与えていきます。過敏に反応する子どももいるので、あおむけよりうつ伏せでの活動から始めるとよいでしょう。

 

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 【子どもをマットやふとんにはさんで、触・圧刺激】 / 【素材の違うものの上を歩く】


 

回転したり、上下、前後などに動いたりして、速度や揺れを感じさせ、感覚を刺激する運動あそびを多く取り入れると、「前庭感覚」や「固有感覚」の統合を促します。具体的には、トランポリンやすべり台、傾斜マットでの転がりあそび等があります。このような動きの経験は、前庭感覚が過敏すぎる子どもは嫌がることがありますが、反対に鈍麻していると必要以上に好みます。また、平均台やトンネル、はしご、マットをサーキットあそびに組み入れると、「立ち直り反射」(重力に対してまっすぐに立つ)や「平衡反応」を強化します。

 

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 【トランポリンや平均台で感覚統合を促す】


 

いろいろな場面に応じて、からだをスムーズに動かすためには、身体認識力や物体と自分のからだの位置関係を捉える空間認知能力を育てていくことが大切です。まず、高い高いやぐるぐるまわし、大玉乗り、ハンモック等で不安定な動きに慣れさせ、恐怖心を取り除くようにします。全身運動のできるサーキットあそびに、鉄棒やトンネルをくぐったり、物をよけて通ったりする運動を取り入れると、自分のからだの大きさを感じ取らせ、ボティイメージを作る訓練として、大変有効です。ぜひ取り組んでみてください。

 

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 【揺れる遊具で不安定な動きに慣れる】 / 【穴のある遊具をくぐり抜け、自分のからだの大きさを感じ取る】