世界最大のデザインの祭典にYUUGUを初出展
2025年のミラノデザインウィークが、今年も4月8日から13日まで開催され、世界中から集まったデザイナー、建築家、メーカー、学生、そして多くのデザイン愛好家たちで賑わいました。
「ミラノデザインウィーク」は、世界最大級のデザインイベントであり、展示会場で開催される国際家具見本市「ミラノサローネ(Salone del Mobile.Milano)」と、市内各所で展開されるイベント「フォーリサローネ(Fuori Salone)」の総称です。ミラノの街全体がデザイン一色に染まるこの一週間は、最新のトレンドを発信するだけでなく、未来のデザインのあり方を提示する場として、世界的にも重要な位置づけとなっています。
この国際的なデザインの祭典に、ジャクエツが今回初めて参加。ミラノ中心部にあるデザインミュージアム「トリエンナーレ・ミラノ」前の広場で、"Playful Sculptures"(プレイフル・スカルプチャーズ)と題したインスタレーションを実施し、YUUGUを中心としたPLAY DESIGN LABのプロダクトを海外で初めて展示しました。現地に行ったPLAY DESIGN LABのスタッフが、2025年のミラノデザインウィークとYUUGU展示の様子をレポートします。
デザイン界の羅針盤「ミラノサローネ」「フォーリサローネ」
第63回を迎えた「ミラノサローネ」は、広大な展示スペースを持つロー・フィエラミラノで開催され、37カ国、2,103ものブランドが、家具や照明など住空間に関わるあらゆる分野の最新コレクションを発表。約169,000㎡の展示面積において、技術とデザインの粋を集めたプロダクトが一堂に会しました。その来場者数は302,548人を記録。ミラノサローネは、世界中のプロフェッショナルが集う、ビジネスと文化の両面で極めて重要なプラットフォームとなっています。
一方「フォーリサローネ」では、ミラノ市内のブレラ、トルトーナ、ヴェンチューラ・フトゥーラといったエリアを中心に、美術館、ギャラリー、ショップ、廃工場など、個性豊かな空間を活かした展示が、新進気鋭のデザイナーやブランド、大学などによって行われました。今年は1,000を超えるイベントが実施され、建築、家具、美術、サステナビリティ、テクノロジーなど多彩な分野が交差。日本からもLEXUS、MUJI、Grand SEIKOなど多くのブランドが参加し、世界の注目を集めました。
2025年のトレンド:サステナビリティ、テクノロジー、そして人間中心のデザイン
今年の展示全体を通して浮かび上がったのは、サステナビリティ(持続可能性)、テクノロジーとの融合、そして人間中心のデザインといったキーワードです。
サステナビリティでは、環境負荷を抑えた素材の選定や製造工程、リサイクル素材の活用などが重視されており、自然素材の温もりを活かしたデザインや、長く使える高品質な製品が注目を集めました。とくに若手デザイナーたちの間では、新素材に挑戦した革新的な試みが数多く見られました。
また、スマートホームに対応した家具や照明、AIを活用した体験型インスタレーションなど、テクノロジーとデザインの融合が進んでいることも印象的でした。より快適で持続可能なライフスタイルの提案が、各所で活発に行われていました。
そしてその根底にあるのが、「人間中心のデザイン」です。美しさだけでなく、使う人の心と身体に寄り添い、心地よさや安心感をもたらすデザイン。多様な価値観に応える、柔軟でパーソナルなデザインに関心が高まっています。
YUUGUがミラノデビュー
今回、ミラノデザインウィークに初出展ながらも大きな注目を集めたのがジャクエツの展示。ミラノ中心部のセンピオーネ公園内にあるトリエンナーレ・ミラノ美術館前の広場を舞台に、デザイナーの深澤直人氏がデザインを手がけた遊具《YUUGU》シリーズを中心に「Playful Sculptures」と題したインスタレーションを展開しました。
Photo: Sohei Oya (Nacasa & Partners)
展示されたのはOMOCHI、CUBE、BANRI、DONUT、HOUSEの5点。テュフ認証によりヨーロッパの遊具基準EN-1176をクリアした製品を中心にセレクトされました。
YUUGUは、シンプルでありながらも普遍的な美しさを持つ彫刻のような遊具。一般的な滑り台、シーソー、ジャングルジムなどとは違い、子どもが楽しく、安全に楽しむことができるプロダクトであると同時に、彫刻的な抽象表現を彷彿とさせる存在感のある佇まいが特徴です。あそびを通して子どもたちのなかに新しい発見が次々に起こり、意識下の行動や思いがけない反応を自然に導き出すオブジェクトとなっています。あわせて展示された子ども椅子PICCOLAとPICCOLA TABLEも深澤氏によるデザイン。赤とグレーが自然の中で映える愛らしい樹脂製の椅子とテーブルは、空間の使い方に多様性をもたらします。
Photo: Sohei Oya (Nacasa & Partners)
Photo: Sohei Oya (Nacasa & Partners)
Photo: Sohei Oya (Nacasa & Partners)
子どもも大人も、夢中になる場所
会期中、美術館前の広場に設置されたYUUGUのインスタレーションには、多くの子どもたちの楽しそうな声がたえず響き渡りました。
朝は近くの幼稚園の子どもたちが、毎日お散歩をしながら開場するのをまちかまえていて、展示の始まりと同時に子どもたちの歓声があがります。お昼前からは家族連れの姿も増えて、周囲はベビーカーでいっぱいに。親子で一緒にYUUGUで遊ぶ姿は夕方まで絶えません。子どもたちにとって、YUUGUはもちろんはじめて目にするものですが、遊びを見つける力は万国共通のようです。
YUUGUのデザインテーマは「あそんじゃうもの」。見つけたら思わず駆け寄って、手を触れ全身を使ってあそびを探しているうちに気づいたら夢中になってしまう。それはまるで、アート作品と触れ合うときのような自由で創造的な体験です。
家族連れでにぎわう会場
子どもたちの遊び方でもう一つ印象的だったのは、移動できるPICCOLAを使って自由に場を作り出していたこと。HOUSEの中に自分の椅子を運び入れると、すぐに兄弟の分も、あ、お父さんやお母さんの席も欲しいねと、あっという間に自分のリビングをつくっていきます。一方で、木の下にたくさんの椅子を並べて学校みたいにしている子どもたちも。動かせるアイテムがあることで、空間の使い方を大きく広げていたように思います。
Photo: Sohei Oya (Nacasa & Partners)
Photo: Sohei Oya (Nacasa & Partners)
デザインのプロも魅了されたYUUGU
ミラノでは、子どもと一緒にたくさんのデザインのプロフェッショナルがYUUGUで遊んでいたことも印象的です。彼らは必ずYUUGUに触って乗って、デザインを体験します。そして椅子をひっくり返しては細部や構造を確かめます。
そして作品に直接手を触れた世界各国のデザイナーからは、感嘆の声と共に、どのようにつくっているのかという質問もたくさんいただきました。YUUGUはFRPというガラス繊維で補強された樹脂でできていますが、強度を出すために何層にもガラス繊維を積層する作業や、滑らかに磨き上げる工程は、一つひとつ日本の職人の手によってハンドメイドで行われています。深澤氏の高い精度のデザインと、職人の技があって実現されたプロダクトに、プロからも「遊具という日常的なものが、アートのような美しさを持つことに驚いた」「子どもたちが自然と遊びたくなるような、魅力的なデザインだ」といった声を多くいただきました。
また会場にはデザインを学ぶ学生の姿もあり、教授とともにYUUGUを囲んで議論を始めるグループや、置いてあったジャクエツのスケッチブックとクレヨンに夢中になって絵を描く学生の姿も見られました。YUUGUは、遊びと学び、日常と非日常の境界を超えた「場」をつくり出していたように思います。
訪れたデザイナー、建築家、アーティストたちのサイン
「あそび」の可能性を、世界へ
YUUGUの初出展は、ミラノデザインウィークという国際的な舞台において、日本の優れたデザインとものづくりを世界に発信する貴重な機会となったのではないでしょうか。「あそび」を通して子どもたちの成長を育むという理念と、深澤直人氏の洗練されたデザインが融合したYUUGUのメッセージは、国境を越え、多くの人々の心に届いたと感じています。
深澤直人氏(左から8番目)とPlayful SculpturesのSTAFF一同
関連ページ :
JAKUETS MILANO DESIGN WEEK 2025
https://www.jakuets.co.jp/feature/playfulsculptures-jp/