「アートは、あそびからはじまる。」


暮らしの中で本物のアートに触れられる環境づくりを目指す PLAY&ART プロジェクトの一環として、アート作品が遊具へと生まれ変わりました。BUTTAIは、あそべるパブリックアートとして、子どもも大人も楽しむことができるFRP製遊具です。監修は、彫刻家の小畑多丘氏。B-BOY哲学がミニマルに落とし込まれた、上下左右のない、幾何学的な形が特徴です。走り回ったり、よじ登ったり、じっとのぞき込んだり。BUTTAIを取り巻くあそびの景色がひとつのアートとして再構築されます。


Taku Obata
Sculptor

彫刻家。1980年埼玉県生まれ。2006年東京藝術大学美術学部彫刻学科卒業。08年同大学大学院美術研究科修士課程彫刻専攻修了。「B-BOY(ブレイクダンサー)」の木彫を軸に、ドローイングや版画などの平面作品の制作も行う。

Images

Production story

BACKGROUND

「あそび」とは自分の知らないこと、経験したことがないことへ挑み、楽しむこと。「アート」とは一見分からないもの、簡単に言葉にならないものをつくりだすこと。「アート」は「あそび」であり、「あそび」もまた「アート」であるといえます。子どもたちが暮らしの中で自然と「アート」に触れられるように、アーティストとコラボレーションする PLAY&ARTプロジェクト。ローレンス・ウィナー氏、ロッカクアヤコ氏に次ぐ遊具シリーズ第3弾、彫刻家 小畑 多丘氏による「BUTTAI」が誕生しました。

INSIGHT

B-BOY(ブレイクダンサー)をモチーフとした彫刻作品を手掛ける小畑多丘氏。自らのダンス経験で培った技術や躍動をアートへと昇華させ、重力や物質の移動性、具象や抽象といった彫刻の命題を、B-BOY彫刻やドローイング、ペインティングの手法で表現してきました。無重力をテーマにした写真作品「BUTTAI」は、具象作品の木彫シリーズと対照的な抽象作品となっています。2023年、PLAY DESIGN LABとの協働のもと、あそびとアートを紐づける遊具として具象化しました。

「学生の頃から自分が作ってきた人体彫刻(B-BOY彫刻)とは対照的な抽象彫刻を作りたいと考えていて、それをかたちにしたのが『BUTTAI』です。人体彫刻の靴紐(ファットシューレース)のラインや服(ファスナーやダウンジャケット)のラインなど、過去に自分が作った彫刻の好きなマチエルを組み合わせて制作しました。見ていただくとわかるのですが、上下左右がなく、どう置かれても成立する数学的な形になっています。縦横に並べることもできれば、積み上げることもできる。複雑に組み建てていってもカチッとバランスを取れる軸がどこかにあって、正位置のないブロックのような作品になっています。」

小畑 多丘氏 インタビューより

HOW IT WORKS

立体的な彫刻は、鑑賞者を動かすアートともいわれており、作品の置き方にとって鑑賞者の動きが変わります。配置の仕方を変えることで、子どもたちのあそびに変化が見られました。斜めに流れる凹凸の向きの変化によって、足が引っかかりづらくなり、上手くよじ登ろうと試行錯誤する姿。時間帯によって移り変わる反射光や影の様子を興味深そうに眺める姿。 2体のBUTTAIを近くに配置すると、子どもたちは一緒になって登ったり、寝てみたり、間に立って話に花を咲かせはじめました。2体のBUTTAIを遠くに離すと、あたりを走り回り、子どもたちの動きは、よりダイナミックなものへと変化していきました。

近くで触れる人にとっても、その周辺にいる人にとっても、遠くから見ている人にとっても、暮らしのなかであそびながらアートとふれあえる環境が生まれました。B-BOY哲学がミニマルに落とし込まれた抽象彫刻は、遊具としてだけではなく、それを取り巻く人々や社会の価値観に変容をもたらす、あそべるパブリックアートとしても機能しました。

 

BUTTAI
サイズ:1687×301×H750mm
素材:FRP