⼦どもの成⻑は 、よく⾷べ、よく動き、よく眠るという一連のサイクルによって形成され、そのサイクルが非常に重要だと考えられている。しかしながら従来の研究はアンケートベースが多く、それらがどのように関係しているのか、大規模かつ客観的な計測データに基づいて実証された研究は少なかった。
そこで本調査では、園に通う子どもの活動・睡眠・生活リズムの実態把握や、よりよい保育環境の実現のために、⼦どもたち⼀⼈ひとりの状況を⼀定期間、24時間連続して計測したデータ集め、活動量と睡眠の関係を⼀元的に捉えることを試みた。
本調査は第一期(2020年7月)から第三期(2021年2月)にかけて合計671名の幼児を対象に行ったが、今回は最も規模の大きい第二期(2020年11月)の調査についてご紹介したい。
調査・解析方法
第二期調査の調査対象は、表1のとおりである。調査期間は2020年10-11月のうち1週間で、3~5歳児452名を対象に、3軸の加速度センサ(アコーズ社製MTN-220)を用いて子どもの身体活動を計測した。なお、取得した計測データより、異常値(夜間のセンサ装着無し、センサ未装着の時間が長い、歩数2000歩未満等)を除いたデータを有効データとし、452名分/1幼児あたり約1週間分のデータを収集した。
<調査対象>
<調査方法>
1. 子どもたちに加速度センサを身に着け、園内生活時間内及び帰宅後や就寝中を含む24時間の連続データを計測
2. 調査対象の⼦どもの保護者に、⽣活調査アンケートを実施
調査・解析結果
<年齢別の活動量>
次の図は、平日と休日の歩数の比較結果である。
いずれの年齢においても、休日と比べて平日が1.1倍~1.3倍歩数が多い結果となった。
調査時のカリキュラムを見ると、発表会のお稽古やランタン制作など、文化的活動が多かったが、それでも平日(登園日)のほうがよく動いているという結果となった。
次に図1と同じデータを使用して、横軸に休日の総活動量、縦軸に平日の総活動量を取り、人ごとにプロットした。赤い線が平日と休日の総活動量がイコールとなる。こうしてみても、赤い線より上側、すなわち平日のほうが活動量が多くなっているのがわかる。また、青枠で囲っている部分に注目すると、休日の活動量が少ない幼児においても、登園により活動量を確保できることが明らかとなった。
<年齢別の睡眠時間>
つづいて、年齢別の睡眠時間の解析結果は以下のとおりである。
厚生労働省による未就学児の睡眠指針では、幼児期(3~6歳)の睡眠時間は10時間~11時間と報告されており、5歳頃をピークに昼寝時間がなくなることで総睡眠時間が減る傾向にあるといわれている。
本調査でも、夜間の主睡眠の長さは、年齢による差は小さいが、総睡眠時間(昼寝時間を含む)をみると、10時間以上の割合が3歳児84%、4歳児62%、5歳児51%と、年齢と共に減少していく傾向が見られた。特に昼寝時間は大きく減少し、3歳児と4歳児では約40分も減少している。当然ながら年齢によって、必要な総睡眠時間、適切な総睡眠時間は変わるが、子どもの成長に応じて適切な総睡眠時間を実現する為には、昼寝の取り方も重要である。
また、入眠時刻と起床時刻をみると、年齢と共に徐々に遅寝・遅起きとなる傾向にあった。
これは、現代の日本の生活が夜型化し、大人の社会生活の変化が子どもの睡眠に大きな影響を与えているといえるだろう。
<睡眠と活動量の関係>
子どもの睡眠習慣は、睡眠時間の長さが大切だといわれるが、同時に平日と休日の睡眠時間の差が小さいことも重要視されている。
以下は、3歳児から5歳児の平日と休日の入眠時間と起床時間を比較した図である。
本調査では、入眠時間・起床時間共に、全体の8割が平日と休日の差が小さく、生活リズムが大きく崩れるという傾向はみられなかった。
では、子どもたちの規則正しい睡眠習慣が活動量にどのくらい影響するのだろうか。図5から、平日・休日の起床時間の分布図を5つのグループに分け、朝の活動量との関係を分析した。
平日・休日の起床時間と朝の主体的遊び中の活動量の関係は、平日・休日共に7時前に起床するグループAに属する幼児が最も活動量が多いという結果になった。子どもの成長にも影響する身体活動量の大きさは、睡眠によっても大きく左右され、今回の分析結果からも早寝・早起きと規則正しい睡眠習慣は重要といえる。
まとめ
本調査で計測データに基づく分析結果により、園に通う子どもたちの活動・睡眠・生活習慣の実態を把握することができた。分析結果を大きくまとめると、以下のとおりである。
1. 平日(登園日)は休日と比較し、歩数がおよそ1.1~1.3倍多かった
2. 夜間の主睡眠の長さは年齢による差が小さく、昼寝を含む総睡眠時間は年齢と共に減少していた
3. 平日・休日共に早起きだった幼児は、朝の主体的あそび中の活動量が多かった
本調査の結果からも、現代の子どもたちの生活環境から、体力の低下や睡眠習慣の乱れが懸念され、「保育環境」が全体の生活リズムに大きく影響することが明らかとなった。また、昨今のコロナ過の影響により、子どもたちを取り巻く生活環境は今後ますます厳しくなることが予想される。
未来を担う子どもたちの健やかな成長のためにも、今私たちに求められていることは「よりよい保育環境づくり」である。今後も調査・研究を重ね、具現化し、よりよい保育環境を実現していきたい。
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