遂に公開を迎えたPLAY DESIGN LABの新拠点
2023年10月12日に行われたJAKUETS TOKYO MATSUBARA(以下、JTM)オープニングレセプションが開催された。デザイナー、建築家、教授など多種多様な分野から総勢143名が来場した。1階から~7階の全フロアが開放され、会場では、福井県越前市にある十割手打ちそば処「いたどり」、大阪府岸和田市にあるもちのお菓子屋「餅匠しづく」、福井県永平寺町の蔵元「黒龍酒造」が食と酒を振る舞われた。
レセプションでは、これまでPLAY DESIGN LAB(以下、PDL)の多くのプロダクトデザインに関わってきたNAOTO FUKASAWA DESIGN深澤直人さん、PDLの新しいロゴタイプとグラフィックエレメントの制作を行った、三澤デザイン研究室 三澤遥さん、ロゴモーションの制作を行ったtha ltd.中村勇吾さん、JTMの設計を行ったスキーマ建築計画 長坂常さんも登壇し、それぞれのPDLの新しい挑戦にメッセージを寄せました。
あそびの力で、共遊空間の創造のために
徳本誠(ジャクエツ):共に遊ぶ空間「共遊空間」。これは障がいの有無、年齢や男女など関係なしに多種多様な人たちが、共に遊びながら豊かな環境になるような空間づくりをしたいと思い、「共遊空間の創造により地域社会の発展に貢献する」というビジョンを掲げました。あそびという言葉やテーマが持つ繋がりや広がり、その力を生かしながら地域に対する課題を解決できればと考えながら取り組んでおります。今まで幼稚園・保育園というニッチな市場で事業展開をしておりましたが、乳幼児施設、地域行政というのはそれぞれが繋がりあって関わり合っています。今後、私たちはその全てを包括しながら取り組みができないかと考えております。あそびの力で、また共遊空間の創造のために今日お集まりいただいた皆さんにぜひこのPDLのアンバサダーとして協力をしてもらいながら、また東京松原がPDLの活動拠点になるように活動をしていき新しいプロジェクトをご一緒できれば幸いに存じます。
100年後の未来を良い方向に導いていく
深澤直人:最初のお仕事から12年ぐらい経ちますが、尊敬しているイサムノグチさんが、自分の彫刻として遊具をデザインしていたことを思い出して、「そういうことをぜひやってみたかったんです」と徳本社長にお話ししました。それがきっかけで、これまでたくさんの遊具をデザインさせていただきました。
子どもは、「遊びはこう遊ぶんだよ」と決めてかからず、どんなものでも遊びにするので、できるだけ自由度を持った多様な動きをするような物体を作ろうということを考えました。そうして考えていくうちに、佐藤卓さんと「あそんでしまうもの、あそんじゃうもののほうがいいんじゃない」みたいな話になったことを覚えています。
ここでお集まりの皆さんは100年後の未来を良い方向に導いていただける力がある方ばかりだと信じていますので、今後もジャクエツと皆さんと一緒にいいものをつくっていきたいです。
自在にあらゆる角度からいろいろなものを見ることで物事が豊かに広がっていく
三澤 遥:今回、三澤デザイン研究室でPDLの新しいロゴタイプとグラフィックエレメントのVIを制作させていただきました。私達は丸い玉のエレメントを中心に制作しました。ただ丸を組み合わせただけのものですが、これは何万という単位で組み合わせがあり選べます。
コピーは「わたしたちは、視点です」というものです。PDLは何か一つ形があって作っていくということではなく、そこにまず「視点」があり、それが遊ぶように、自在にあらゆる角度からいろいろなものを見ることで物事が豊かに広がっていく。そんな様子や状態をグラフィックエレメントに込められないかと思い制作しました。色はジャクエツの「いぬはりこマーク」を基に作っています。極めて単純なものが様々なものに変化していくような、「あそぶ」というすごく穏やかで緩やかなやわらかい形の発想が広がっていくようなイメージです。
「あそび」とは何だろうということを子ども大人も直感的に感じてもらえるような空間を作ってほしい
中村勇吾:映像を制作しました中村勇吾です。子ども向けの教育番組を制作していたときに何個かルールを設定していまして、その一つは「子どもを子どもっぽく扱わない」ということです。
子どもは大人よりも、もっと本質的じゃないと伝わらない人たちです。本質的なアプローチやちょっと実験的なことができる場所が子ども向けのデザインの世界だと思いますし、あそびとは何だろうということを子ども大人も直感的に感じてもらえるような、そういう空間を作ってほしいです。
つながりをテーマとした新しい拠点
長坂常:元々ジャクエツ営業拠点のスタイルには、地域に根ざした分厚いコミュニケーションがありました。しかし本社が中心にあって、そこから一方通行のようなコミュニケーションがずっと続いてたように感じました。その部分をいろいろな方向にコミュニケーションを築いていけるようにしたいと思いました。
例えば何かの案件で大阪店のスタッフが詳しいとなったときに、東京店の顧客にダイレクトにコミュニケーションを取っていってもいいのではないか。そういうふうにもっと分厚く双方向のつながりを作っていくことができないだろうかと考えました。そのために発想したのが、その空間がそのまま繋がっているような一日中ずっと隣り合わせで仕事をするような空間ができればと思いました。カメラとモニターを斜め45度に配置することで、どこにいても画面が見えるし対話ができる状況が生まれます。
2階、4階はそのような仕組みのオンラインで、3階はオフラインで物を考えたり遊んだりできるような場所で5階がストックになります。6階は、日帰り出張で1時間のミーティングだけでコミュニケーションが終わるのではなく、そこに滞在することによって今までより深いコミュニケーションが取れるのではないかと思いプロジェクトメンバーが滞在できるホテルにしています。そして7階がミーティングスペースとイベントを行える場所となっております。
このような形で、全国の営業所、設計事務所、工場がオンライン・リアルともに双方向につながる、あそびいっぱいのジャクエツを目指していければなと思います。
さまざまな視点が分け隔てなく、多様な繋がりができ、研究所としてより一層広く社会課題に取り組んでいきたい
徳本達郎(ジャクエツ):これからPDLという研究所を子どもだけを対象にするというのではなく、まちづくりなど、広い範囲で地域社会の課題を解決することに取り組んでいきたいと思っております。
その拠点として今後ジャクエツの全国67営業拠点、各地方自治体とも繋がっていくというテーマで今回JTMを長坂常さんにうまく形にしていただいたのではないかと思っております。
以前、佛子園の雄谷理事長からも「ごちゃまぜ」というキーワードで障がいのある方や地域の人々を分けずにコミュニティを作ることが大切だと教えていただいた際、かなり衝撃を受け、あまり様々なことを定義しない方がいいなと感じました。元々「あそび」は定義できないものなので、何とか形にできないかと、三澤遥さんと中村勇吾さんに無理なお願いをさせていただいて、今回のグラフィックとミッションの再構築となるものをつくっていただきました。この場で、皆さんの視点を分け隔てなく、多様な繋がりができ、研究所としてより一層広く社会課題に目を向けて取り組んで参りたいと思います。
JAKUETS TOKYO MATSUBARA
パブリックスペースなどの新たな顧客を迎えいれることを視野に入れ、変わりゆく時代に向け体制や働き方を見直したジャクエツの新たな旗印となるような拠点が完成。営業店、開発、リノベーション、設計、パブリックスペース、総務、PDLなど、今までそれぞれで分かれて業務を行っていたメンバーが一つの拠点に集結する形となった。今回、フリーアドレス制を導入し、みんなが分け隔てなく交流できる環境となった。また、3Fにはオフラインを設けオフィスフロアとは違う空間として、遊具SAPIENCEや、ソファーを配置し気軽に打ち合わせが行えるような空間も設計された。
これから新拠点「JAKUETS TOKYO MATSUBARA」をベースに、もっと広く社会にあそびを展開していける。新拠点のオープニングに集まった関係者の笑顔からは、各々にそんな期待や思いが溢れていたように感じられた。