素材を感じる。空間のスケールを感じる。体感で刺激される知的好奇心。/小泉誠さんインタビュー

November 30th, 2023
小泉 誠
家具デザイナー
日本全国のものづくりの現場を駆け回り地域との協働を続けている家具デザイナーの小泉誠さんが株式会社ジャクエツとのコラボレーションにより子どもたちの居場所づくりとして、木の温もりに包まれるようなあそび空間「あそべば」や「第二さみどり幼稚園(福井県)」をプロデュースされた。子どものあそび場と木の魅力をどのように織り交ぜたのか、小泉さんにお話をうかがった。

 

あそべば(小泉氏指定)木箱のような小さなあそび空間「あそべば」


 

デザイン、工芸に携わるものとして多くの点で共感。


-今回のプロジェクトの経緯を教えてください。


2年ほど前なんですが、友人からの紹介を受けて、まずはお話を聞いてみようということで福井のジャクエツ本社へ伺いました。そこですでに案件として始動していた第二さみどり幼稚園のことをうかがい、現場も近かったので見させていただき、具体的な話と共にジャクエツの想いをうかがいました。この時、徳本社長ともお話しする機会があり、理念や考え方をうかがってとても共感する部分が多かったこと、また個人的にも工芸に精通されていて熱い想いを持たれているところにシンパシーを感じ、今回のプロジェクトにトライしようと思ったのが最初でした。


-今回のコラボレーションで感じられたことは?


子どもたちの「あそび」をキーワードに、商業的だけでなく感性、デザインに関わるところまでしっかり理解して進められていたため、非常にやりやすかったです。また企業としての規模が大きいこともさることながら、これまでさまざまなデザイナーとも組んで常識にとらわれない素晴らしい作品を作ってこられました。常に新しい「あそび」を提案できる場として認知されていることは大きなポテンシャルだと思います。

 

 

家も、食器も、玩具も、人の暮らしに関わる全てが家具。


-小泉さんにとって家具デザインとはどのようなものでしょうか?


家具デザイナーと聞くとおそらく多くの人は椅子やテーブルをデザインする人のイメージだと思うんですが、日本には昔から書院造りや床の間のような建築化された家具があります。そこには建築と家具に明確な境界線はなく、家自体も暮らしに使う道具であり、暮らしに使われる全てが家具であるという考え方に至りました。人がいる場所には「機能」が生まれ、その「機能」を計画して形にすることがデザイナーの仕事だと思っています。だから私は家もデザインするし、食器や玩具も、人の暮らしに関わる全てをデザインします。

 

 

人が自然と居たくなる場所、モノが美しく見える場所をつくり、正しい余白をデザインする。


第二さみどり幼稚園 (1)トリミング小泉さんがデザインした第二さみどり幼稚園の保育室




-第二さみどり幼稚園のプロジェクトについて教えてください。


第二さみどり幼稚園には、とてもセンスの良い玩具があったので、片付けるだけではなくそういったものを飾る場所もつくっています。また、日がたくさん入って眺めも良い窓際にベンチを設置することで、一番気持ちの良い場所に子どもたちがいられるようにしました。DENを設けて、狭い空間に入ることが大好きな子どもの好奇心をくすぐる仕掛けを設け、子どもたちの居場所をつくっています。手洗い場やロッカーなどの「出っ張り」をできるだけなくすことで、無駄なスペースをなくし教室の一体感を生みだしています。単なるスペースに子どもたちや先生がいるのではなく、人にもモノにも居場所をつくり、正しい余白をデザインしています。

 

第二さみどり幼稚園 (3)トリミング木材はそれほど使っておらず、要所に効率よく配置することで全面木質化のような空間になっている。


 

第二さみどり幼稚園 DENDEN(隠れ小屋)には子どもたちが吸い込まれるように入っていく。




-今後、実現してみたい展望などはありますか?


私はデザイナーとして、具体的にこういうものがつくりたいというものは無いようにしています。もっとこうしたいと思うものはそれを使う人であったり、それを提供する企業が主となって考えることであり、その想いに応えて形にするのがデザイナーだと思っています。ただ、展望というよりは今後の展開として、今回の企画が1プロジェクトで終わるのではなく、ジャクエツがもつ伝える力によってさまざまなところに派生していくということは十分考えられると思います。

 

小泉誠 (2)トリミング