「あそびで越える、自分を超える。」 ー第4回 こども環境サミット/初開催 共遊空間EXPOをレポート!ー

February 28th, 2025
PLAY DESIGN LAB
プレイデザインラボ 事務局
2025年2月12日から14日にかけて、大田区産業プラザPiOにて開催された「こども環境サミット/共遊空間EXPO(主催:ジャクエツ)」。「こども環境サミット」は今回で4回目の開催。子どもたちの未来について、さまざまなジャンルの専門家と一緒に考えるイベントとなった。同時開催となった「共遊空間EXPO」は初開催である。まちに豊かなにぎわいを生みだし、つながりや文化を醸成する「共遊空間」。あそびを軸としたまちづくりについて考える機会となった。

今回のイベントのテーマは「あそびで越える、自分を超える」。昨今の子どもに関わる社会課題は、一つの施設や組織だけでは解決が難しい。そのためにも、地域社会の中で多様な関係者が連携し、枠を超えた一歩を踏み出すきっかけとしてのメッセージが込められている。

この記事では、グッドデザイン大賞2024を受賞した「RESILIENCE PLAYGROUND」をはじめ、プレイデザインラボが手掛けるさまざまな遊具の展示や、総勢12名の専門家によるトークショーが開催された「こども環境サミット/共遊空間EXPO」の様子をレポートする。

 

イベントの入口には「こえる」のファーストミッション「BUTTAIを越えろ」


 

 

あそびが持つ可能性


今回のイベントのスタートは、2階の展示スペースから。まず目に飛び込んできたのは、グッドデザイン大賞2024を受賞した遊具「RESILIENCE PLAYGROUND」の模型とコンセプトワークの展示だ。

これは、「障がいの有無にかかわらず誰もが遊ぶことのできる遊具」として、医療と遊具の分野を超えて、医師の紅谷浩之氏監修のもと実現したプロジェクトである。トランポリン遊具の「YURAGI」は、身体が不自由な子と健常児が調和して揺れ体験を楽しめる。スプリング遊具の「UKABI」は、馬型のスプリング遊具にまたがれない子も座って揺れを感じられるものだ。そして、ブランコの「KOMORI」は、中が空洞の球体に“こもる”ことで、身体の安定が難しい子や感覚刺激が過敏な子でも安心してブランコ体験ができる遊具となっている。それぞれの開発秘話やこだわりのポイントなどの解説は、非常に興味深く新しい遊具の形について考えさせられる内容であった。

 

「RESILIENCE PLAYGROUND」プロジェクトの展示


 

続いての展示は、「あそびでなにをこえる?」。今回のサミットのテーマ「あそびで越える、自分を超える」について思考を深めるため、6つの「〇〇をこえる」をテーマに掲げて、ジャクエツが体験したエピソードが紹介されていた。 「はじめてをこえる」では、教具やおもちゃで小さな子どもたちの初めての一歩を後押ししたエピソードを紹介。「ちがいをこえる」では、世代を超えた交流を促した事例や、誰もがあそべる遊具に使用されている部品などが展示されていた。子どもたちの過ごす園舎をテーマにした「舞台をこえる」や、遊具をメンテナンスして次の世代へ受け継ぐ「時代をこえる」、ワークショップやあそびで地域の人々が交流する「地域をこえる」、アートとあそびを融合した「想像をこえる」といった展示も大変考えさせられた。

 

今回のイベントテーマである、さまざまな「あそびでこえる」を展示


 

最後には、展示を見た中で一番興味を持った「〇〇をこえる」のテーマにスタンプを押して投票。その半券が、1階展示スペースの入場チケットとなっていた。さりげないところにもあそび心が込められていて、大人でも童心に帰って楽しめるイベントになっていた。

 

Bブロック型のスタンプをチケットに押すと、1階の入場券となる


 

 

 

想像力が掻き立てられる遊具たち


 

RESILIENCE PLAYGROUNDプロジェクトに監修いただいた紅谷氏と遊具デザイナー田嶋氏によるスペシャルトークショー


 

1階展示スペースに入ると最初に目に入るのが、「RESILIENCE PLAYGROUND」の実物展示だった。先に紹介した3点の遊具に加えて、新しいハウス遊具の「TOTONOI」とコンセプト展示としてクッション型すべり台「SUBERI」も設置されていた。実際に遊んでみると、安定感がありながらも、今までにない心地よい揺らぎに癒される。どのような個性を持った子どもでも楽しめることを実感できた。

会場を取り囲むように設置されていたのが、大型遊具の数々だ。「PLAY COMMUNICATION 07」は、六角形の大きな空間をベースに、すべり台やつかまりあそび、よじ登るあそびなどができる総合遊具。多方面に広がりがあるため、どこに行くかを“選ぶ”ことができ、身体的側面や社会的側面、知的側面、精神的側面、情緒的側面という5つの要素を自然に養える。「Keplerシリーズ」は元陸上選手の為末大氏監修の遊具で、体幹やタイミング、空間認知能力といった運動能力が鍛えられるとのことだ。

 

SAPIENCEシリーズ 新商品含め4基が展示された


 

「SAPIENCEシリーズ」は円と曲線で構成された「人類のための、知的遊具」だ。踊り場がない分難易度は高く、頭を使いながらあそぶことが求められる。遊具とは思えないような抽象的な見た目はデザイン性も高く、子どもだけでなく大人も刺激を受けるだろう。

子どもたちの想像力と表現力を高めるごっこあそびを実現する「Gokkoシリーズ」も印象的だった。料理や洗濯といった日常生活のごっこあそびや、ワゴンカーでのお店屋さんごっこなどを、細部までこだわったリアルなおもちゃを使って楽しめるというものだ。特にワゴンカーの運転席はハンドルやアクセルペダル、ギアといった機構が再現されており、まるで本物のクルマを動かしている気分になれる。リアルなこだわりが詰まっているからこそ、子どもたちは想像力を膨らませてあそびに夢中になれるだろう。

 

Gokkoシリーズ 新商品


 

アート×遊具で非認知能力を向上


今回のイベントの見どころのひとつは、プレイデザインラボの遊具がすべて展示されていることだ。まるでアート作品と見まがうような、デザイン性の高い遊具が多数展示されていた。深澤直人氏とコラボレーションした「YUUGUシリーズ」は、洗練されたデザインでオブジェとしても完成度が高く、シンプルだからこそあそびの幅が広がりそうだ。

プレイデザインラボは今も尚アーティストとのコラボレーション遊具を積極的に展開している。「自然と人間の関係を追及する」アーティストの平子雄一氏とコラボレーションしたハウス遊具「THE HOUSE」は、その存在そのものがアート作品だ。アートの中に実際に入って、ごっこあそびやおしゃべりを楽しめるとは何と価値のある体験だろう。「ねずみのANDY」や多くの企業とのコラボレーションで知られるアーティストの松本セイジ氏とコラボレーションした遊具は、チーズを模したハウス遊具「CHEESE HOUSE」やかわいらしいANDYのスプリング遊具「WITH ANDY」に心が癒される。パブリックアートであり遊具である「BUTTAI」は、彫刻家の小畑多丘氏とのコラボレーションから生まれた。一見遊具には見えない不思議な物体は、子どもたちのイマジネーションとインスピレーションを刺激するだろう。

 

松本セイジ氏とのコラボレーション遊具「CHEESE HOUSE」と「WITH ANDY」


 

平子雄一氏とコラボレーションした遊具「THE HOUSE」


 

子どもは小さい頃から芸術性の高いものに触れていると、非認知能力や脳の発達に好影響があるという研究結果が出ている。美術館などに赴いてアートに触れるのももちろん素晴らしいが、遊具で日常的に、かつ自然とアートに触れ合うことで、子どもたちの可能性はさらに広がっていくことが期待される。

遊具らしい遊具からアート作品のような遊具まで、幅広い遊具が展示されていた「こども環境サミット/共遊空間EXPO」。子どもだけでなく大人も想像力を掻き立てられる、刺激あふれる展示ばかりで、見ているだけでもワクワクする内容だった。全ての子どもたち、そして大人たちを包括して、運動能力や社会性、想像力を養うきっかけとなるジャクエツ。「あそびで越える、自分を超える」というテーマの通り、子どもたちの輝く未来に希望を抱けるイベントとなっていた。

 

 

 
PREV