「やってみたい」が生まれる、あそび環境とは? 第22回日本子ども学会学術集会で、PLAY DESIGN LABの取組みを発表

September 30th, 2026
PLAY DESIGN LAB
プレイデザインラボ 事務局
2026年9月5日・6日、沖縄県南城市のオキナワインターナショナルスクールを会場に、第22回日本子ども学会学術集会が開催された。今回のテーマは、「オキナワから考える“日本、世界の子どもの課題解決” ~少子化、自己肯定感、平和構築、国際人財~」。医学、心理学、教育学、保育学をはじめ、さまざまな分野の研究者や実践者が集まり、子どもの視点から日本や世界が抱える課題について考える2日間となった。PLAY DESIGN LABは、初日に開催されたシンポジウムでの話題提供をはじめ、遊具展示、共同研究を行っている白百合女子大学によるラウンドテーブルでの研究報告を通して、「あそび」と子どものウェルビーイングについて考えた。

 

子どもの「やってみたい」は、どこから生まれる?


9月5日に開催されたシンポジウム②のテーマは、「子どもの心理的ウェルビーイングを考える ~文化の多様性と自由な選択とレジリエンス」。白百合女子大学の菅原ますみ教授、鳴門教育大学大学院の藤村裕一教授とともに、株式会社ジャクエツ PLAY DESIGN LAB 主任研究員の加藤將則が登壇し、「子どもたちのあそび環境をつくる遊具と保育者の役割」と題して話題提供を行った。

今回、PLAY DESIGN LABが投げかけたのは、子どもにとって豊かな「あそび環境」とは何かという問いである。子どもは、本来自ら遊び、自ら育っていく力を持っている。一方、現代では、安全面への配慮や近年の酷暑、地域コミュニティの変化など、子どもたちが全身を使って思いきり遊べる機会や場所を確保することが難しくなりつつある。「子どもは何もなくても自然とあそびをつくる」と考えるだけで、本当に十分なのだろうか。

乳幼児期の子どもたちは、触る、登る、揺れる、走る、人と関わるといったさまざまな経験をあそびの中で重ねていく。だからこそ「やってみたい」という気持ちを引き出す環境が重要になる。遊具が子どもの「やってみたい」というきっかけをつくり、保育者や大人の見守りが、「やってみても大丈夫」という安心感をつくる。その二つが重なることで、子どもの主体的なあそびが生まれていくのだ。

 

あそび方を決めすぎない。「余白」のある遊具




PLAY DESIGN LABが考える遊具は、あそび方の「正解」を子どもに教えるものではない。思わず触りたくなったり、登ってみたり、揺れてみたくなる。遊具と出会った瞬間、理屈ではなく自然に身体が動き、「遊んじゃう」。そのために大切にしているのが、あそび方を決めすぎない「余白」である。自然の中では、一本の木でさえ、子どもによってあそび方が変わる。枝に手を伸ばして登る子もいれば、木の根元を基地にする子、何かに見立てて物語を始める子もいる。遊具もあえて一つのあそび方に限定せず、「どうやって登ろう?」「ここでは何ができるだろう?」と、子ども自身が考え、試し、自分なりの関わり方を発見できる余白を残すことが大切だ。

遊具があそび方を決めるのではなく、子どもがあそびを発明できる環境をつくる。そこから、想像力や試行錯誤、新しいルールや物語が生まれていく。シンポジウムでは、こうした考え方を実践してきた二つの事例を紹介した。

 

事例1:「遊べない子ども」ではなく、「遊べない環境」がある



一つ目の事例は、医療的ケア児との出会いから始まった「RESILIENCE PLAYGROUND PROJECT」である。身体を自分で支えること、遊具を握ること、一般的なブランコに座ることが難しい。当初、私たちはそうした子どもたちを「遊べない子ども」と捉えていた。しかし、子どもたちや家族、医師、ケアスタッフと時間を重ねるなかで、一人ひとりに好きな感覚や動き、あそびがあることが見えてきた。そこで気づいたのが「子どもが遊べない」のではなく、「これまでの環境が、その子のあそびを引き出せていなかったのではないか」ということだった。

そこから、医療的ケア児、医者、遊具デザイナー、地域住民など、異なる立場の人たちとともに開発した遊具が、「YURAGI」「KOMORI」「UKABI」である。これらは、医療的ケア児だけのための遊具ではない。障がいの有無によって遊ぶ場所を分けるのではなく、同じ場所にいながら、一人ひとりが自分なりの方法で遊べることを目指している。学会会場にもRESILIENCE PLAYGROUNDの遊具を展示し、参加者に実際に触れてもらいながら、インクルーシブなあそび環境について考える機会となった。



 

事例2:「訓練」ではなく、「遊んでいたら身体が動いていた」



二つ目の事例は、発達支援の視点から早稲田大学・広瀬統一教授と共同開発した「Be You KITTO」である。発達支援の現場では、子どもの発達を支えるための活動が、ときとして「訓練」になってしまうことがある。そこで目指したのは、「この運動をしてください」と大人が指示するのではなく、遊んでいるうちに自然と身体を動かしてしまう環境だった。揺れる、傾く、バランスをとる、登る、這う、ぶら下がる。さまざまな動きを「やらされる」のではなく、子ども自身が楽しいあそびとして経験していく。

「RESILIENCE PLAYGROUND」と「Be You KITTO」。二つの取り組みに共通しているのは、「子どもを環境に合わせる」のではなく、「環境を子どもにひらく」という考え方である。

 

遊具だけでは、豊かな「あそび環境」は完成しない


そして、もう一つ大切なのが、保育者や大人の存在である。どれほど工夫された遊具があっても、それだけで豊かなあそび環境が完成するわけではない。子どもが挑戦しようとしたとき、先回りして答えを示すのではなく、その姿を見守る。すぐにあそび方を教えるのではなく、子ども自身が考え、試し、ときには失敗しながら、自分なりの方法を見つける時間を待つ。そして結果だけではなく、「もう一回やってみたんだね」「自分で考えたんだね」と、その過程を認める。そうした大人の関わりによる安心感が、子どもの次の「やってみたい」を支えていく。

遊具が「やってみたい」を生み、大人が「やってみても大丈夫」を支える。その重なりの中に、子どもが自分らしく遊び、「自分はここにいていい」と感じられる居場所が生まれる。PLAY DESIGN LABは、そこに子どもの心理的ウェルビーイングにつながる「あそび環境」のあり方があると考えている。

 

研究からも、「あそび」の意味を捉える


9月6日大会2日目のラウンドテーブルでは、PLAY DESIGN LABと共同研究を進めている白百合女子大学から「子ども期の心理的ウェルビーイングに関わる保育・養育環境―3年目の縦断調査からみえてきたもの―」として、これまでの研究調査の中間報告が行われた。この共同研究では、子どもの心理的ウェルビーイングと、日々のあそびや保育・養育環境との関係について継続的に調査している。PLAY DESIGN LABでは、遊具やあそび場をつくる実践だけでなく、「あそびが子どもの育ちにどのような意味を持つのか」を研究の視点から捉える取り組みも進めている。

 

あそびの力を、研究と実践から


子どもには、自らあそびを見つけ、試し、工夫し、自分なりの世界をつくっていく力がある。だからこそ私たちがつくるべきなのは、「こう遊びなさい」と答えを与える環境ではなく、子どもの「やってみたい」が自然と生まれ、一人ひとりが自分なりのあそび方を発見できる環境なのではないだろうか。あそび方を限定しない「余白」をつくること。さまざまな子どもに環境をひらくこと。そして、大人がその挑戦を急がせず、見守ること。

子ども自身が「あそび」をつくり出せる環境を、どうデザインしていくか。PLAY DESIGN LABはこれからも、さまざまな分野の人々とともに、研究と実践の両面から「あそび」の可能性を探り、子どもたちの未来につながるあそび環境を考えていく。

 

 

 
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