9月に第15回キッズデザイン賞、そして10月に2021年度グッドデザイン賞の受賞作品が発表された。大人にとっても画期的な製品はもちろん、子どもにまつわる様々な製品も受賞となっている。今回は、プレイデザインラボが注目する受賞商品をいくつかご紹介したい。
第15回キッズデザイン賞
キッズデザイン賞とは、子供や子どもの産み育てに配慮したすべての製品・サービス・空間・活動・研究を対象とする顕彰制度である。
プレイデザインラボからは、以前REPORTでもお送りしたプレイデザインラボと富士通株式会社の共同研究
『子どもたちの活動と睡眠の調査研究』が、〈子どもたちを産み育てやすいデザイン部門〉でキッズデザイン賞 審査員長特別賞を受賞している。
>>過去記事(子どもたちの活動と睡眠の調査研究 - PLAY DESIGN LAB × 富士通株式会社 共同研究 –)
Withシリーズ
withシリーズは〈子どもたちの創造性と未来を拓くデザイン部門〉でキッズデザイン賞を受賞している。
協力する、真似をする、競争する。ひとりではなく誰かと “ともに“ 挑戦し成長できる。身体能力の向上とともに心も一緒に成長させる総合遊具だ。
withは、子どもたち自身で遊び方を考える必要のある機能パーツで構成されている。友達と一緒に協力して登り方を考え、お互いの遊び方を真似し合い競い合うことで、自身の能力でできる遊びの幅を広げ、飽きる事なく遊ぶ事ができる。また、withには上に登るための階段が設けられていない。登るための最初の機能の難易度が高いので、まず登る事ができる能力を備えた子どもだけがチャレンジできる仕組みとなっている。
誰でも遊べる遊具は、逆に危険な行為を誘発することもある。withシリーズは、階段を無くすなどあえてクリアできるハードルを上げ、挑戦する事を目的とした独自性のある提案が評価されたようだ。
>> withシリーズ キッズデザイン受賞ページ
良質な音響空間で子ども達を守り育てるー長洲ひまわり幼稚園での実証実験―
こちらは〈子どもたちの創造性と未来を拓くデザイン部門〉の調査・研究、リサーチ分野でキッズデザイン賞を受賞している。国内における保育施設の良質な音響空間のモデルづくりを目指し、新築設計園での音響設計モデル園舎の実現と検証に取り組んだものである。
本研究の調査対象園では音楽教育を通して子ども達の感性を育む「合唱・合奏・鼓隊・踊り」等にも力を注いでいた。そのため、新築園舎の計画として、楽器の音や子どもの声等の反響を緩和することで、楽しく演奏ができ、子ども・職員にとって言葉を聞き取りやすくする音響設計を行った。音響監修は我が国の保育施設の音環境基準策定に中心的な役割を果たしてこられた熊本大学大学院建築音響研究室の川井敬二教授へチームに参加し、プロジェクトを実施したという。
言語や聴覚の発達時期にある乳幼児の保育環境に対して、「言葉の聞き取りのための静けさの確保と響きの低減、午睡などの休息のための静けさの確保、喧騒間の緩和、遊びを妨げない音響空間の確保・施設近隣への静音性保全」の4点を掲げ、響き過ぎない空間を実現させた。園舎完成に伴い行った各種状況音での音響試験など、音響の客観的データを示した点が評価されている。今後、さらに検証検討し音響と保育環境のエビデンス確立に期待したい研究である。
>>良質な音響空間で子ども達を守り育てるー長洲ひまわり幼稚園での実証実験―の受賞ページ
2021年度グッドデザイン賞
グッドデザイン賞とは、製品・建築・ソフトウェア・システム・サービスなど、かたちのある無しにかかわらず、人が何らかの理想や目的を果たすために築いたものごとをデザインととらえ、その質を評価・顕彰している賞です。
プレイデザインラボからも数多く受賞しており、近年では鉄製遊具「PLAYRING」(2019年度グッドデザインベスト100)や、「子どもの健やかな心身の発達を育む取組み(PLAY COMMUNICATION PROJECT)」が受賞している。
PICCOLA
PICCOLAはイタリア語で「小さい」というように、小さな子どもが”ちょこん“と座っている姿が可愛らしく感じられる子ども用の椅子である。
デザインはプレイデザインラボのフェローでもある、プロダクトデザイナーの深澤直人氏。安全面や座った時の正しい姿勢維持などを子ども用品メーカーであるジャクエツが監修している。全体を柔らかい曲線によって、優しさを表現することで子ども達が自然と座りたくなるデザインに。それでいて、乳幼児が使用するため、手足が挟まる隙間や、衝突時にけがの原因となる凸凹が少ない安全な形状となっている。
世の中の子ども椅子はどこかにキャラクター要素があったり、カラフルな家具が多いと感じられる。特に樹脂で出来ているものはその手のデザインが多い。しかし、このPICCOLAはそういったニュアンスは感じられず、シンプルな形状で端的な情報を子どもに伝えているかのように感じられる。また、赤とグレーの落ち着いた色味で、様々な空間において、大人の家具との調和も容易にイメージできる点などが評価されている。
>>PICCOLA受賞ページ
HECHIMA
HECHIMAは、従来の登攀棒から発想されいる。カーブパイプや太い柱を足掛けや休憩所として利用することで、自分で登りやすい柱を見つけ、最後まで登りきるという達成感を味わうことができる鉄製遊具である。
プレイデザインラボ遊具である「SANGO」「KUMO」に続く第三弾として、当研究員でもあるデザイナー赤木あずさ氏によってデザインされた。
<SANGO・KUMOについてはこちら→
過去記事:木登り好きが創った 未来型ジャングルジム>
HECHIMAは登り棒が苦手であったというデザイナーの想いから、得意な子も苦手な子も一緒に遊ぶことができる遊具を、という想いで開発されたという。中心に集められた背の高い登り部分の他にくぐる、ぶらさがる、横渡りといった異なる遊び要素も多く含んでいるのがHECHIMAの特徴だ。一つの遊具で多様な遊びができること、子どもの体格や能力に応じた遊びができること、また固定が不要のため設置が容易でかつ移動可能なことなど。従来の形式にとらわれず新たな遊具の形を提案していることが高く評価されている。
>>HECHIMA受賞ページ
最後に
少子化や感染症の流行など、子どもたちだけでなく、大人も巻き込んで日々環境は変化し続けている。
子どもたちの心身の健やかな成長のために、『あそび』にできる事はなんだろうか。
プレイデザインラボでは今後も様々な『あそび』に焦点を当てて注目していきたい。