Liam Gillick(リアム・ギリック)
1964年イギリス生まれ。彫刻、版画、建築、グラフィックデザイン、映画、音楽など、さまざまなメディアで活躍。現在ニューヨークにて制作活動を行う。重要な国際展に多数参加。著名美術館でのパブリックコレクションも多数ある。
撮影:Hiroyasu Matsuo
今回のコラボレーションにより実現した新カラーのBブロック
2022年6月7日~9日にパシフィコ横浜で開催された『こども環境サミット2022』ではリアムギリックの作品を新カラーのBブロックで再現し展示された
― 今回、Bブロックコラボ企画のオファーをお引き受けいただいた理由は、何でしょうか?
私は子どもの頃、いつもレゴなどブロックのおもちゃで遊んでいました。子どもながらに、野心的な空想の世界を作ることに取り組んだのです。自分の作ったものを他のおもちゃと組み合わせて、世界全体を作りあげることに没頭していました。Bブロックの仕事を引き受けた理由は、あそびの力というものを信じているからです。
― ギリックさんの子ども時代について、もう少し教えてください。
私はロンドン近郊のアリスバーリーという街で育ちました。子どもの頃は、空想の世界を作ったり、言語を生み出して小さな本を書いたりもしました。友達と一緒にいるのも好きでしたが、学校から帰ってきて寝室に作り上げた空想の世界や街に戻っていくときが、私にとって楽しみな時間でした。
― ギリックさんは、カラフルな印象の作品だけでなく、色数を抑えた作品も創作されていますが、ギリックさんにとって「色」はどのような意味をもちますか?
私は、子どもの頃に抱いた色への熱意を忘れないようにしています。そして作品に、純粋な色を使うようになりました。人間が世界をより良くするために作り出した色が好きなのです。
私が作品を作るときはいつも、「色と形の間に存在し得る様々な関係性」をテーマにしています。その意味では、「色」は私にとって、構築された世界の一部としての意味しか持ちません。世界は「色」だけでは存在し得ないのです。
― 今回、ギリックさんによる2つのアートピースからBブロックのニューカラーを採用しました。配色に込められた思いを教えてください。
今回、Bブロックの新色のきっかけとなった作品たちは、「あそび」の過程から生まれています。「高度なあそび」と言って良いかもしれません。具体的には、作品の一連の型(フォルム)を決めた上で、順序付けられたパターンに見えない組み合わせにたどり着くまで、色で遊んでいくのです。色と形との間には、穏やかな緊張感がなければならない。私の考えでは、色は活きていなければなりません。色と形との間に緊張感が失われると、色そのものが活きないのです。
― 子どもは「あそび」を通じて多くのことを学びます。ギリックさんにとって「あそび」とは?
あそびは、私の作品の核になっています。子どもたちにとってだけではなく、社会的なものとして非常に重要です。ハイレベルな大学教育でも、世界の仕組みを理解するためにゲーム理論を扱います。あそびはアートになくてはならず、創造の喜びと複雑さを生み出す上で極めて重要な活動です。
― 子どもに「アートって何?」と尋ねられたら何と答えますか?
アートとは、日々の生活の構造の外側に存在するものです。誰にもコントロールされることのない気持ちや感情、欲望を表現しようとする「特別なもの」です。作品を作るということはすなわち、アートとは何かを問うことです。これは非常に人間的な活動なのです。
― 幼少期から日常的にアートに触れることで、どのような良い面があるのでしょうか。
子どもたちから創造的な時間を奪ってしまうと、彼らはのびのびと成長できません。アートは、共感を生むとともに、子ども自身の限界を試すものです。そして世界を見る目を養います。つまり、アートに触れることは、子どもたちが達成感と失敗の両方を受け入れることと同じ意味を持つと思います。
― 子どもの想像力、表現力を育むには、どのような環境が良いと思いますか?
子どもは、安全でなおかつ、刺激的なものに囲まれていたいものです。たとえば床やテーブル、窓枠など、さまざまな場所で遊ぶことが好きです。あそびにはいろいろなレベルを設定すると良いでしょう。そして子どもたちには、大人の支配から逃れて想像を膨らませられるようなプライベートな空間も、必要だと思います。
― この記事の読み手である日本の保育園や幼稚園の先生方に、メッセージをお願いします。
私はいつも、日本の子どもたちの知性と直感に感銘を受けています。あそびは、子どもたちに世界がどう見えているのかを、大人に教えてくれるきっかけになります。
保育園や幼稚園の先生方の仕事ぶりには、いつも感心させられます。先生たちは、社会が幼少期の子どもたちを託す人たちであり、子どもたちを社会的な人間に育てるために、社会が頼りにしている人たちです。私たちは、先生たちの声に耳を傾けて、先生たちが支えられ、敬意を払われるようにしなければならないと考えています。
国際芸術展「岡山芸術交流 2016」で披露されたギリックの屋外作品、通称「リアム・タワー」(写真左)。地下スペースに光を取り込むためにあった大きな採光塔をカラフルに彩ったもの。
右の写真は、同芸術展のギリックの作品「開発」。
実際にミニゴルフができる。リアムはこの国際芸術展でアーティスティックディレクターを務めた。
© Okayama Art Summit Executive Committee
撮影(左右とも):Yasushi Ichikawa
色彩豊かに構成されたギリックの作品。「順序付けられたパターンに見えない組み合わせにたどり着くまで、色で遊んでいく」という言葉を彷彿とさせる配色。
©Liam Gillick Courtesy of TARO NASU
撮影(左から順に): Kei Okano、Sebastiano Pellion di Persano、Kei Okano