2022年8月に第16回キッズデザイン賞が、10月には2022年度グッドデザイン賞の受賞作品が発表されました。その中でもプレイデザインラボが注目する受賞作品をいくつか紹介します。
また記事後半ではアワード特別企画として、受賞作品を開発したチームに開発当時のエピソードについて話を伺いました。
キッズデザイン賞
キッズデザイン賞とは、子供や子どもの産み育てに配慮したすべての製品・サービス・空間・活動・研究を対象とする顕彰制度です。プレイデザインラボからは、以前REPORTでもお送りした『
遊びがループする園舎 英明幼稚園』『
コミュニケーションとひらめきが生まれる場所 Bブロック研究所』が受賞しています。
LINK:キッズデザイン賞受賞ページ/英明幼稚園
LINK:キッズデザイン賞受賞ページ/Bブロック研究所
組み替えステップロッカク・ロの字
低年齢児を主な対象とし、子どもの運動発達に合わせて難易度を変えた様々な種類の運動あそびができる柔らかい運動教具。
園での手作り教具をヒントに、あそびが拡がり取り扱いやすい仕様を追求されています。
また、保育者や子どもから出てきたあそびのアイデアを年齢ごとにまとめて紹介した遊び方BOOKで使い方がイメージしやすく、子どもの運動能力向上に貢献している商品です。
LINK:キッズデザイン賞受賞ページ/組み替えステップロッカク・ロの字
EGGシリーズ
卵をモチーフにした親しみやすいデザインの低年齢児が安心して挑戦できる遊具シリーズです。使い方がわかりやすい雲梯、太鼓橋、滑り台というベーシックな遊具を、低年齢児の運動能力開発に適した機能やサイズに設計されています。アルミ素材により軽量化を図っており、管理者が容易に持ち運べるのも特徴です。
LINK:キッズデザイン賞受賞ページ/EGGシリーズ
グッドデザイン賞
グッドデザイン賞とは、製品・建築・ソフトウェア・システム・サービスなど。かたちのある無しにかかわらず、人が何らかの理想や目的を果たすために築いたものごとをデザインととらえ、その質を評価・顕彰している賞です。
Curve Partition
四半円の組み合わせで、設置場所に合わせた配置をすることで手軽に空間に変化を与える事ができる間仕切りです。包まれてる安心感を与えつつ、保育者の死角になりにくいよう窓や高さが設定されています。見立て遊びがしやすいシンプルな背景デザインや、長時間飽きさせない遊び機能がついています。
LINK:グッドデザイン賞受賞ページ/Curve Partition
アワード特別企画◇開発エピソードインタビュー
今回プレイデザインラボではアワード特別企画として、キッズデザイン賞を受賞したEGGシリーズの開発メンバーの3名(写真左から、株式会社ジャクエツの渡邉 祥子さん、森 万由加さん、松本 紗季さん)に、開発当時のエピソードなどをインタビューしました。
EGGシリーズの開発の経緯を教えてください。
森:当時、弊社では幼児用の遊具は数多くあったのですが、乳児さんが使える遊具となると特注で対応することが多く規格品として出せるものがあまりありませんでした。幼稚園のこども園化などで乳児の施設が増えてきていて、低年齢児用の遊具の需要が高まっていたこともあり、低年齢児用の遊具をこのメンバーで作って欲しいと依頼を受けて開発がスタートしました。
最初は文章とか文字の要素からのブレストを始めました。同じサイズの紙を各々に配ってそれにちょっと文字でもいいし絵でもいいから書いて。それを模造紙にマッピングするみたいに貼ってイメージを固めていきました。そこからサーキット遊びができる遊具が良いのではないか、という風に方向性が決まり、次はサーキットといえばこんな要素があるよね・・という風に広げていきました。
サーキットあそびができる遊具にしようと決めた理由は?
森:乳児用の園庭をつくろうと市場調査をした際に、乳児専用に敷地を確保できる施設って意外と少ないのではないか?という結論に至りました。
渡邉:だから、一体式の大きな遊具ではなく、それぞれの機能をもった持ち運べるコンパクトな形状と重さを目指そうと思ったんです。そしてどうせ持ち運べるならサーキット状にして置き方を自由に設定できるとそれぞれの園にあった遊びが生まれるのでは?という風に考えました。遊具と遊具の間を子どもたちがぐるぐる遊んでまわるようなイメージですね。
コンパクトにしたことで、この時間帯は乳児さん、その他の時間帯は幼児さんという風に場所を設定して使用する事ができるようになりました。また、自由に置き方を変えることができるので、その日その日で置き方を変えて同じ遊具だけど飽きずに遊ばせることもできます。
EGGシリーズを製作している上で苦労した点はありますか?
森:コストの問題がかなり大きくて、最後まで苦労したのを覚えています。
乳児さん向けということもあって、視覚・聴覚・触覚を含む五感を大事にした遊具にしたいと考えていました。なので始めは、滑ると音がなる仕組みや色んな触り心地のする飾りなども検討していたんです。でも全てを実現しようとするとコストがかかり過ぎてしまう。そのためどこを残すか、どこを削るかを繰り返し検討していました。
これだけは削れない・・というのはありましたか?
森:視覚的な要素のポリカパネルだけはどうしても削りたくないなと考えていました。
渡邉:EGGの名前の通り卵を連想させるポリカパネルはシリーズの顔にもなってくる重要な部分です。卵から生まれて、ここから成長していく。スタート地点のような遊具になって欲しいというEGGのコンセプトを伝えるには、やはり譲れない部分でした。
また通常の遊具だと手足を動かす遊びに意識が行きがちですが、視覚から楽しむことで遊具に興味をもつきっかけにもなれば、と考えていました。
検証で子どもたちに遊ばせる中で、予想外だったことはありますか?
森:始めは雲梯の検証からスタートしたのですが、ステップを置くか置かないかで子どもの動きに違いが出てくることがわかりました。ステップを置くと足場に意識が向くのか、一方通行でくるくるくるくる動き出すようになりました。ステップを取ると今度は好きなところから自由に入ってぶら下がったりポリカパネルを叩いたり、先ほどとは異なる遊び方が生まれました。
渡邉:太鼓橋も面白かったです。登ることはできるのですが、そこから身体を反転させて降りるというのが小さい子にとっては難しい。登ったはいいけど、ここからどうしよう・・と考えだしてしまったんです。そこ困るんだ・・というのは自分たちには凄い発見でした。
今後やってみたいことを教えてください
渡邉: EGGシリーズを考え始めた時、実はこの3つ以外にも色々考えていて模型まで作っているんです。できればその他にも出ていたアイデアを実現させたいですね。
森:今回削ってしまった音のアイデアも含め色々考えていたので、これで終わらず増やしていきたいですね。私は個人的にも一度乳児用ブランコに挑戦して実現できなかった・・という経緯もあってEGGのブランコを作ってみたいなと思っています。
松本:私も続編を作っていきたいと考えています。現段階ではこれ!と決めているものはないのですが、チームみんなで案出しから始めて乳児さんたちがわくわくできるものを作っていきたいです。