Miyanomori Kindergarten


「広大な敷地と豊かな自然に囲まれた森と過ごす園舎」


子どもたちに木の温もりを感じてほしい、自然にふれてほしいという思いをかたちにするため、広大な敷地と自然に囲まれた豊かな自然と調和する木造建築を設計しました。周囲の大自然を園舎の中にいながら体感できるよう森に向けて窓を配置し、樹木のある中庭や、森に向かってひらいた屋外デッキを設けて四季を感じられる園舎となりました。杉やヒノキなどの宮城県産材や、近年注目されているCLT材を採用し、内部も木の温かみに満ちた、まさしく“森と過ごす園舎”になっています。また、園舎だけでなく、幼稚園から認定こども園への移行に伴い、これまでの歴史・伝統を継承しつつ、新たな園へのリブランディングを行い、新たなシンボルマークなどもデザインしました。「みやの森こども園」は豊かな周囲の環境に調和された園舎が評価され、2023年度グッドデザイン賞を受賞。同時に園舎の一部に県産材CLTを採用し、木の温もりを感じられる園舎設計が評価され2023年度ウッドデザイン賞も受賞し、ダブル受賞となりました。


Hirokazu Ogino
Architect

一級建築士。群馬県生まれ。日本大学生産工学部建築工学科卒業後、稲塚二郎都市建築設計事務所で学校建築に携わる。その後、木造住宅や集合住宅の設計を経験し、地元に戻り、2004年ジャクエツ入社。北関東新潟、東北エリアで多くの園舎設計を手掛けている。2007年けやき保育園で栃木県マロニエ建築景観奨励賞。2016年つきよのこども園でウッドデザイン賞。2018年かわば森のこども園でキッズデザイン賞。2023年みやの森こども園で、グッドデザイン賞、ウッドデザイン賞を受賞している。

Haruka Misawa
Designer

武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科卒業後、デザインオフィスnendoを経て、2009年より日本デザインセンター原デザイン研究所に所属。2014年より三澤デザイン研究室として活動開始。ものごとの奥に潜む原理を観察し、そこから引き出した未知の可能性を視覚化する試みを、実験的なアプローチによって続けている。主な仕事に、水中環境を新たな風景に再構築した「waterscape」、かつてない紙の可能性を探求した「動紙」、国立科学博物館の移動展示キット「WHO ARE WE」、隠岐ユネスコジオパーク泊まれる拠点「Entô」のアートディレクション、上野動物園の知られざる魅力をビジュアル化した「UENO PLANET」がある。著書に『waterscape』(出版:X-Knowledge)。

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Production story

BACKGROUND

柱や梁を子どもたちに見せるため、木造(その他の建築物)とし、みなし別棟と2か所の防火壁で区画しました。全体の配置計画は、既存の遊戯室とエントランスホールを中央に、東側の0.1.2歳保育室は小さな中庭を囲み、西側の3.4.5歳保育室は、高窓から光がそそぎまっすぐ伸びる廊下の両側で、突端は絵本室と見晴らしの良い持ち出しテラスで、眼下では馬、羊、ヤギが草を食べています。どの保育室からも、軒がCLTの外廊下に出られ、周囲の森が見えます。季節の移り変わりや、風のにぎわい、雨音など天気の推移を感じます。その外廊下からテラス、外廊下へと回遊します。サイン計画では森で暮らすさまざまな生きものを抽象的に立体化しました。低年齢児でも感覚的に覚えられ、サインそのものが、子どものやわらかな想像力を引き出すつくりとなってます。子どもたちは自然を敬い、園庭の築山に新築した祠に、自ら、森の木の葉や花、実をお供えします。

 

INSIGHT

人間性を形成する幼少期だからこそ、自然との触れ合いを通じてやさしさや思いやりを育むと考えます。約50,000㎡の敷地の大半は森です。その森の中の遊歩道を子どもたちは歩きまわり、木の葉や花、実、虫などの生きものを発見したり触れたりして、森と木と親しみ過ごします。今回の計画では30年前の木造の遊戯室だけ残し建て替えました。園舎内でも木に親しんでもらいたいとの想いから、柱や梁を見せる構造としました。しかし多くの森林では、伐採されず成長した資源の木が残る状況にあります。こどもたちの未来に健全な森を残すため、宮城県は県産木材の利用拡大として、CLT等利用の木造建物建設を推進しています。幼保施設でのCLT等利用は法適合や耐久面など懸念事項がある中、木材の劣化原因のひとつである直射日光や雨がかりを防ぐことと、子どもたちが歩けば自然に目にし、親しめるように外廊下やテラスの軒に、県産材CLTを採用しました。

 

 

 

DATA

学校法人たちばな学園 みやの森こども園

所在地:宮城県黒川郡

竣工年:2022年

構造:木造2階建(一部鉄骨造・RC造)

敷地面積:49907.99㎡

延床面積:2620.99㎡

建築設計:株式会社ジャクエツ

施工:仙建工業株式会社

サインデザイン:三澤 遥(株式会社日本デザインセンター)

2023 グッドデザイン賞

2023 ウッドデザイン賞

2023 木材利用優良施設等優秀賞