子ども期のしあわせを構成するもの ~幼児のあそびと心理的ウェルビーイング調査~

June 21st, 2024
菅原 ますみ
白百合女子大学 教授
眞榮城 和美
白百合女子大学 准教授
PLAY DESIGN LAB
プレイデザインラボ 事務局

研究グループの紹介


PLAY DESIGN LABは、白百合女子大学と“幼児のあそびと心理的ウェルビーイングに関わる保育・養育環境に関する縦断的研究プロジェクト”をスタートした。

研究グループのメンバーは、白百合女子大学人間総合学部発達心理学科 教授 菅原ますみ、准教授 眞榮城和美、白百合女子大学大学院文学研究科発達心理学専攻博士課程に所属し、本プロジェクトの目的に関心を持って研究活動を行っている大学院生により構成されている。

白百合女子大学:東京都調布市にあるカトリック系女子大学。日本で唯一「発達心理学科」を標ぼうし、人間の一生涯の発達に関わる要因についてさまざま観点から学ぶことができる。

※発達心理学科に関する詳細は白百合女子大学のHP参照 https://www.shirayuri.ac.jp/course/human/psychology/index.html

 

 

子どもの“心理的ウェルビーイング(Psychological Well-being: PWB)”とは


最近、さまざまな場面でウェルビーイング(well-being)という表現を目にするようになったのではないだろうか。その注目度については、例えば、SDGs目標3において「Good Health and Well-Being」の表現が用いられ、「地球上のすべての人が心身ともに健康で、社会的にも満たされた、幸福な生活を送ること」が目指されるようになった点からもわかる。

国連機関ユニセフの調査(先進国の子どもの幸福度に関する調査, 2020)によると、日本の子どもたちの精神的幸福感は先進国38か国中37位と最下位に近い状況であり、身体的健康度が1位であることとアンバランスな状態にあるとの報告もある。また,SDGs目標3は、あらゆる年齢のすべての人々におけるGood Health and Well-Beingの達成を目指すとされているが、子どものPWBに着目した研究はまだまだ少ない現状にある。そのため、何が子どもたちのPWBの形成に関わっているのかについて探求することは、本邦における重要な社会課題となっている。

 

 

子どものPWBを測る方法


ウェルビーイングは、幸福感などの心理的な指標と平均寿命などの客観的な指標から測ることができる。また、心理的ウェルビーイング(Psychological Well-being: PWB)は、人生全般にわたるポジティブな心理的機能を意味しており、抑うつ感や不安感を軽減する効果があると言われている。

子どものPWBは、日々を生き生きと楽しく笑顔で過ごせていること(精神的健康度)や自分のすることに自信が持てて自分を好きでいられること(自尊感情)などから構成されている。そこで,今回のプロジェクトでは、幼児期のPWBに影響する要因のなかでも、とくに園や家庭でのあそび体験に注目して調査計画を立てた。

 

 

子どものPWBに関する縦断的研究を実施することの重要性


OECD(2021)は,効果的な子ども政策のために必要なPWB測定の改善ポイントとして以下の7点を挙げている。

 

1.子どもをまんなかに据えた調査であること

2.子どもの年齢や発達段階にセンシティブであること

3.子どもの視点を反映していること

4.現代の子ども期を反映していること

5.子どもの生活の安定性と変化の側面をとらえていること

6.不平等な状態をとらえること

7.多様なバックグラウンドを持つ子どもたち/支援が必要な状況にある子どもたちのニーズに応えられること

 

上記の提言を参照し、本プロジェクトでは、調査期間を6年間とし、子どもの年齢や発達段階にセンシティブな研究計画を立て、子どもの視点を反映した研究を実施していく方針である。

 

 

本調査のデザイン


2023年度から6年間の継続調査をスタートしている。

調査は年に1回、アンケート調査と子どもたちへのインタビュー調査、保育者へのアンケート調査の3つの情報に基づいて実施している。

 

<研究スケジュール>


毎年1回(秋頃)、各年齢クラスの保護者様宛に研究協力依頼。

 

調査イメージ(毎年1回,秋頃に調査を実施・最大6時点ご協力いただく縦断研究)2023年度に0歳児クラスに所属していた場合ご家庭の場合


 

<調査内容>


A.保護者対象調査:アンケートの実施(年1回)

物理的環境・養育態度・お子さんの様子(日常的な「あそび」体験や気質・性格など)について尋ねる質問項目から構成されたアンケートの実施。

 
B.子ども(4歳児クラス・5歳児クラス)対象調査:インタビューの実施(年1回)

日々の生活の中での「あそび」に関する質問を中心に,子どもたちが回答しやすいように絵や写真を用いる形式でインタビュー調査を実施。

 
C.保育者対象調査:アンケートの実施(年1回)

Bに回答した子どもを担当している保育者に対し、子どもの様子(主として「園でのあそび経験」)について尋ねる質問項目から構成されたアンケートの実施。

 


子どもインタビューの様子



あそび環境に関する調査資料の例


 

2023年度の研究成果報告状況


子ども期の心理的ウェルビーイングに関わる保育・養育環境に関する縦断的研究(1)-幼児期における自己有能感と遊び環境・就学準備性との関連-日本発達心理学会第35回大会(於:大阪国際交流センター,2023)

 

今後も心理学系の学術会議を中心に、毎年研究成果報告を行っていく予定である。

 

 
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