市民とともに創る、屋内型子どものあそび場「おおの天空パークOSORA]

January 21st, 2026
石山 志保
福井県大野市長
山崎 勝彦
大野市教育委員会 事務局長
高橋 俊博
株式会社ジャクエツ パブリックスペース ディレクター
大野市は人口減少対策を最大の課題と位置づけ、「こどもまんなか応援サポーター宣言」を県内でいち早く宣言し、各種子育て施策を推進しています。それらの取組みにより経済的支援の充実や精神的負担の軽減に加え、2025年1月には、まちなかに子どもの声を反映した屋内型こどものあそび場「おおの天空パーク OSORA(おそら)」をオープン。人のつながりを生むパークサポーターの活躍もあり、開館以来、来場者数を大きく伸ばしています。大野市独自の「こどもまんなか」施策の特色と、その未来への展望についてお届けします。

 

人口減少対策と市民の願い
~屋内遊び場への強い要望~


-第6次大野市総合計画前期基本計画では、市民の皆さまが重視する施策として、子育てや学びの分野が満足度・重要度ともに高い位置にあったと思います。改めて市長にお伺いしますが、大野市の子育てに関する取り組みの特徴や魅力についてお聞かせいただけますでしょうか?

石山市長:第6次大野市総合計画は令和元年度から2年間をかけ、市民と市が協力して作り上げました。一言一言の言葉選びにも気を配り、皆でアイデアを出し合い思いをまとめていく、これが大野市のスタイルです。
計画を作り始める段階で、私が最初に申し上げたのは「大野市最大の課題は人口減少対策である」という視点でした。この課題を直視する中で、市民からは「子どもたちは宝であり、未来の市民をどう育てるか」という声が自然に上がり、大野市の皆さまが子どもを非常に大切にしていることが強く認識されました。この市民の思いを反映し、総合計画の前期基本計画の基本目標の最初に「こども」分野が掲げられています。

そして大野市では「子育てはもっと温かく、もっと楽しいもの」という思いを大切にしています。子育てを夫婦だけで抱え込まず、地域全体で応援し、支え合っていく形を目指し、「子ども・子育て支援事業計画」を策定しました。

当初は、若い保護者の不安を和らげるため医療費の助成や保育料の第2子以降の無料化にいち早く取り組むなど、経済的支援を充実させました。加えて、障害児サポート、共働き家庭のための支援策、そして相談体制の強化なども進めてきました。

一方で、「大野は雪や猛暑などで外遊びが難しい期間が長いため、「屋内で安心して遊べる場所がほしい」という声が多くありました。このニーズに応えるため、天候に左右されず、子ども達が安全に安心して楽しく遊ぶことができる魅力あふれるあそび場を今回整備しました。

 

大野市の石山志保市長




「心の安心感」を生む支援を継続
~保護者の明るい表情が見られるOSORA~


-子育て支援についての市民の声は、子育て世代だけからではなく、年配を含めた幅広い世代から寄せられたものですか?

石山市長:はい、幅広い世代から寄せられました。少子化は地域の大きな課題として強く認識されており、ちょうど大野市の小中学校の再編の議論も重なりました。80代の方々が「1学年800人いた時代」を知る一方で、今は1学年200人を切る状況です。こうした現状を年配の方々もだんだん分かってきて「若い方々への子育て支援を強化しなければ、大野は大変なことになる」という、強い危機意識が世代を超えて共有されていたのです。だからこそ、子どもや子育て世帯への支援は、非常に大切だという思いが、市全体に広がっていたのだと感じています。

大野市の子育て・教育の特徴は、現在の子どもや家族の不安を取り除き、必要とされる支援を丁寧に届けることです。「子育ては楽しいもの」「地域みんなで応援するもの」という思いを込めて、令和2年度から「大野ですくすく子育て応援パッケージ」を作りました。これは職員の知恵を集めて、妊娠期から学童期、若者、そして保護者支援までを網羅し、手に取るだけで安心できるような分かりやすいリーフレットに仕上げています。令和7年度からは「大野市こども・若者計画」を策定して教育委員会を含め、全庁的に施策を進める体制へと移行しています。

-取り組みを継続したことで、効果についてはどう感じておられますか?

石山市長:コロナ禍の影響もあり、子どもの人口が大きく増えたわけではありません。ただ、それよりも私が強く感じているのは、保護者の表情の変化です。6〜7年前にお母さん方とお話したときと比べ、今OSORAにお子さんを連れて来られる保護者の皆さんは、本当に明るい表情をされています。「みんなに支えられている」「安心して頼れる場所がある」という心の安心感を持っていただいているのかなと思います。

今回の「大野市こども・若者計画」の策定にあたってのアンケートでも、5年前は「金銭的支援」や「子育に関する情報が少ない」という声が多かったのに対し、今回は「きめ細やかなサポートがほしい」という声に加え「将来的な不安を取り除いてほしい」「人生設計ができる相談場所がほしい」といった、さらに一歩進んだ声が増えてきました。後期基本計画前の調査でも、子育てと学びの評価は高い結果でした。これは、寄せられたニーズや困りごとに丁寧に寄り添い、必要な支援を施してきた積み重ねが結果として表れているのだと思います。



子どもの声で色を決める
~協働と愛着を生むOSORAのデザイン~


-OSORAの施設は2023年に基本計画が決まりましたが、それ以前から準備をされていたのでしょうか?

石山市長:そうです。私の2期目の公約でもあり、市民からの要望も非常に強かったものです。県外にある屋内施設のようなものをイメージしている方が多く、私自身も子育てをしていたので気持ちがよく分かりました。「全天候型のあそび場」をつくりたいという思いを職員と共有し、女性職員や子どもを育ててきた職員など多くの意見を集めながら構想を練っていきました。

山崎事務局長:OSORAは、小学生を主なターゲットに捉えました。広い空間でないと子どもたちは飽きてしまうので、広さだけでなく高さも必要だという結論に至り、場所を選定して、現在の場所が最適だと判断しました。「飽きがこない」「好奇心をかき立てる」という方針をもとに、子どもたちが体を使って思い切り遊べる場所を目指しました。計画の際、候補地には閉校したばかりの小学校やショッピングセンターもありましたが、さすがにこの天井の高さはどこにもありませんでした。

 

石山市長(左)と大野市教育委員会の山崎事務局長(右)


-計画を進める中で、ご自身がワクワクした場所はありますか?

山崎事務局長:私はネット遊具にこだわりました。縦の動きは平面だけではできませんが、ネットがあることで上にのぼる楽しさや、上で遊ぶ楽しさが生まれます。

石山市長:私は実はもう少し小規模なスケールとなることを想像していたので、この規模を決めるのは市長として大きな決断でした。しかし出来上がった施設を見ると、本当に満足度の高いものになりました。みんなが行かない場所になったらそれこそ意味がない。自分の子育てを振り返り、保護者の気持ちになると、この規模がよかったと感じています。
そして「天空の城」が遊具のモチーフに入ってくるとは思わず、とてもうれしかったです。大野らしさが加わり、よりワクワクする内容にしていただいたのはジャクエツさんのおかげだと感じています。

山崎事務局長:民間のノウハウを取り入れたことで、市役所職員だけでは思いつかない発想が多くありましたね。やはりこの空間に入った瞬間、気分が高揚します。施設方針の中には「大野市らしさを出して愛着につながる施設」という項目も入っていて、ジャクエツさんがそれを実現してくれました。

石山市長:原案づくりは職員が中心でしたが、実際に形にする段階では市内の保護者の意見も取り入れています。「こどもまんなか応援サポーター」宣言に基づき、子どもの声も反映しました。遊具やデザインの色味は小学生にアンケートを取って決めています。特に遊具は赤や青、黄色といった原色になると思っていましたが、子どもたちが選んだのは大野の自然を思わせる柔らかな色で、これも大きな発見でした。設計の段階からジャクエツさんにサポートいただき、インクルーシブ遊具も整備できたことは非常に大きな特徴です。

山崎事務局長:「OSORA」という名前も市内の小学生から公募しました。子どもたちから出てきた施設名で、みんなで選んだという気持ちになれるので愛着もわきます。

 

OSORAにはインクルーシブ遊具も整備されている



「会いに行きたい」と思える場所へ
~パークサポーターの役割~


-運営面では、パークサポーターの存在が大きな特長だと思います。具体的なお仕事について教えていただけますか?

髙橋:館内には、館長、フロアスタッフ、受付、清掃員の4名に加え、パークサポーターというスタッフを配置しています。パークサポーターは、利用者同士が自然につながるようサポートする役割で、平日は親ひとり・子ひとりで来る方が多く、離れて遊んでいる親子同士をおもちゃを通じて結びつけたり、あそびを一緒に楽しめるよう促したりしています。イベント企画やインスタ更新も担当し、来場のきっかけづくりを行っています。

ハード面は大野市が素晴らしいものをつくってくださいましたので、私たちジャクエツは「地域に人が集まる居場所をどうつくるか」というソフト面を充実させるためにパークサポーターを導入しました。このような子どものあそび場は、お子様がいる方以外はなかなか入りにくいんですが、大人も立ち寄りやすい空間づくりを現在進めています。パークサポーターも地域のクラブに自ら出かけ、大人の方にも「OSORAに遊びに来ませんか?」と声をかけてくれています。将来的にはカフェの稼働も視野に入れ、誰もが気軽に訪れる施設にしていきたいと考えています。

石山市長:子どもを真ん中に据えた地域の広がりは、今の時代にとても合っていると思います。雨や雪が多い大野でも、子どもが思い切り遊べる場所ができ、おじいちゃんおばあちゃんも「連れてこれる場所ができてうれしい」と喜んでくださっています。その言葉をいただくことが多くて、私もほっとしています。
何よりも、遊具のプロフェッショナルが最初から関わってくださったことで、トイレや設備など細部まで使い勝手の良い空間になったこともありがたい点です。
運営でも、鯉のぼりやハロウィンなど季節の企画を丁寧に行ってくださり、パークサポーターの存在が施設の魅力を大きく高めてくれているのだと分かります。

髙橋:ありがとうございます。私たちは遊具の楽しさだけでなく、「誰かに会いに行きたい」という気持ちが芽生える施設づくりを目指しています。

石山市長:とても大事なポイントだと思います。何度も足を運びたくなる施設には、施設に対する愛着と人とのつながりがありますし、パークサポーターは保護者にとっても相談しやすい存在の方なんだろうと印象を受けます。

 

パークサポーターと親子が触れ合う様子




子どもを思い切り遊ばせたい!
~ニーズに応え利用者の声に寄り添う運営~


-2025年1月のオープンからまもなく1年を迎えます。来場者数や内外の反応について、現状をどう捉えておられますか?

山崎事務局長:来場者数については「市内が8割、市外が2割」と想定していました。実際は「市内が3割、市外が7割」と、近隣の福井市や坂井市から多く来ていただいています。この規模の屋内施設は県内に少なく、大野市がいち早くオープンさせたことで人気を集めているのだと思います。

オープンから2025年11月末までの来場者数は、すでに6万人に迫っています。年間目標を約4.1万人としていましたので、想像していたよりも遥かに多くの方に利用していただいている状況で、うれしい限りです。

髙橋:この規模のあそび場は他にありませんし、大野市ならではの特色を生かした施設ですので、多くの方が期待して来ていただいているのだと思います。

石山市長:県内で「子どもを思い切り遊ばせられる場所」を探していた方が多かったのだと思います。1年目から良い状況で運営できているのはありがたいことです。

髙橋:オープン後からアンケートの実施により、皆さまの声を少しずつ反映をしています。たとえば食事スペースが少ないとの声を受けてテーブルを増やしたり、寒さの声に対応してカーペットを追加したり、満足度を高める工夫を続けています。



子育て拠点としてまちの中心にある意義
~親しみと愛着が生まれる立地~


-市長、今後のビジョン、子育ての展望についてお聞かせいただいてもよろしいですか?

石山市長:大野市の子育て応援は、福井県内で一番子育てしやすいまちを目指して取り組み、きめ細かい充実した支援に育てることができたと感じています。ご意見をお伺いしながら、必要なサポートに変えたり、実行したりを続けてきますし、将来に不安を抱える保護者にも安心感を持っていただけるよう、どの世代にも分かりやすく情報を届けていきたいと考えています。

今後、県内の市町にも複数の同様な施設ができてくると思いますが、OSORAが特に喜ばれている理由の一つは「まちなかにある」という点です。まちの中心に子どものための施設があることで、OSORAに来た後にまちを歩いたり、買い物したり、散策したりする動線が生まれます。これを郊外に作ってしまうと、子ども真ん中のまちづくりとしては十分でないかもしれません。かつてまちなかの小学校の体育館だった場所に、生活に近い位置で子育て支援の拠点ができたことは、とても大きな意味があると思っています。

髙橋:親しみのある小学校の場所が新しい姿に生まれ変わったことで、さらに愛着がわくのだと思っています。

石山市長:その通りだと思います。暮らしの場と切り離して郊外につくるのではなく、市民生活の日常の延長にあり、みんなが来やすい場所に子育て支援の拠点ができたことは大きなポイントです。子どもや保護者にとって本当に意味のある施設になったと感じています。

-ご多忙の公務の中、お話しいただきありがとうございました。

 

 

 

 
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