湯田温泉こんこんパークが目指す、まちづくりとあそびの風景

June 5th, 2026
田中 新治
山口市役所
堀田 謙二
光井純アンドアソシエーツ建築設計事務所株式会社
玉井 伸幸
株式会社ジャクエツ パブリックスペース ディレクター


「美肌の湯」として知られる山口県山口市の湯田温泉。その中心市街地に位置し、温泉や健康、交流、自然とのふれあいをテーマにした新しい地域の拠点としての複合施設・湯田温泉こんこんパークは、「あそびば」「まなびば」「たまりば」をコンセプトに、単なる温泉施設ではなく、地域住民同士はもちろん、観光客との交流も生まれるスポットとして、2025年にオープンしました。

「イキイキ遊ぶ」「ワクワク学ぶ」「ノビノビ過ごす」といった思い思いの使い方が許容される空間づくりにより、多世代の居場所として機能している同施設。

今回は、施設ができあがるまでを紐解きながら、地域の居場所づくりについて大切にしていることや今後の展望を伺いました。

 

観光地に“日常”をひらく──湯田温泉こんこんパークのコンセプト




―まず、湯田温泉こんこんパークの立ち位置について教えてください。

田中:湯田温泉は都市型温泉地・観光地として知られていますが、実際にはその周囲に住宅地が広がっていて、市民の生活の中にある場所でもあります。観光客だけが訪れる場所ではなく、市民の方が普段づかいをする場所に観光客が自然に入ってくる。そのような状態をつくることで、結果として新しい交流が生まれるのではないかと考えました。

堀田:大広場の周りにeスポーツができたり、山口市を紹介する交流スペースや温泉スペースがあったりと、さまざまな要素を混ぜ合わせることで、予想もつかないような交流が生まれます。賑わいのきっかけになる空間をつくることが目的でした。

 

施設内の大広場


―湯田温泉こんこんパークはどういった背景から生まれたのでしょうか。

田中:もともと、湯田温泉は飲食店が並ぶ夜の大人の街という印象が強かったんです。だから日中にも訪れてほしいという思いがありました。加えて、市民誰もが利用できる市民温泉が欲しいという要望も以前からありました。湯田温泉こんこんパークはそんな背景から生まれました。山口市としては湯田温泉のまちづくりの方向性として「住んでよし訪れてよし湯田温泉」をコンセプトとしているので、地域住民も観光客にも満足度の高い施設を作ることを意識しました。中心地に温泉が湧いているという都市型温泉の強みを活かし、「若者・高齢者・子育て世代」のたまり場として機能する施設になればいいなと。放課後に子どもが遊びに来たり、小さいお子様と楽しめるように足湯を設えたり、高齢の方が畳で休んでいたりと、多世代が気軽に来て過ごせる場所を目指していました。

堀田:完成後にここを訪れると、たくさんの子どもが遊んでいるのはもちろん、白狐の遊具を中高生が使っていたり、足湯で高校生が勉強していたり、本当に幅広い世代の人が来ているなと感じます。

 

白狐遊具



“決めすぎない設計”が生むあそび


企画プロセスや、施設実現のために意識されたことを教えてください

田中:大きく3つ意識していました。1つ目は、街に寄り添いながらともに成長する施設であること。2つ目は、足湯文化を活かすこと。そして3つ目が、多様な交流を生み出す「ごちゃ混ぜ」の状態をつくることです。これを軸に計画してきました。

ただ、最初から具体的に何をつくるかが決まっていたわけではありません。「多世代交流」「健康増進拠点」というテーマを追求していく中で、「パーク」という形にたどり着きました。

堀田:それに伴って、遊び場や足湯カフェ、お絵描きスペースなど、さまざまなアイデアが広がっていきました。正直、自由に提案した部分もありますが、田中さんが挑戦してくださったことで、結果的にこんないい施設ができあがった。技術的にどう成立させるかという部分もありましたが、それも含めて検討して実現に至りました。

田中:どの提案も、コスト面や実現可能性をきちんと踏まえたうえで出していただいていたので、安心して検討することができました。

 

共創によってつくられたあそび場




―湯田温泉こんこんパークは一般的な複合施設のイメージを超えるコンテンツが集まっていると感じます。遊具の話も出ましたが、今回のプロジェクトで特徴的なのは、遊具のあり方だと感じています。

堀田:初期段階では、階段自体を遊具にするような設計も考えていました。その中で、ジャクエツさんとご一緒することになりました。ジャクエツさんは山口市小郡に事業所があることも知っていたので、紹介を通してご一緒することになりました。

玉井:最初はもっと分かりやすい遊具をイメージしていました。複合遊具のような、機能がしっかり決まっているものです。話を重ねる中で、「あまりつくり込みすぎないほうがいいのではないか」という考え方に触れて、それがすごく印象に残りました。

堀田:「何もないところからあそびが生まれる」という考え方があります。もちろん完全に何もないわけではないのですが、使い方を決めすぎないことで、子どもたちが自分であそび方を見つけていく。決めてしまうと、その通りにしか使われなくなります。そうではなくて、余白を残すことで、使い方が広がるのではないかと考えました。

―遊具を考える際にワークショップを行ったそうですが、それについても教えてください。

 

ワークショップ


玉井:子どもたちにも参加してもらって、いろいろな意見を出してもらいました。本当に自由な発想が多くて、参考になりました。
白狐の遊具についても、通常であればキャラクター性の強い遊具になるところを、使い方を限定しない形にしています。「キツネに見えるのか」「ちゃんと遊んでもらえるのか」と不安はありました。

堀田:遊具の周りを子どもが走り回り、滑り台のようにして滑る姿が想像できました。結果的に多くの人に遊んでもらえる遊具になりましたし、湯田温泉こんこんパークのシンボルにもなっていると思います。弊社内でも評判は良いです。ジャクエツさんは、単に遊具を提供するのではなく、「安全で楽しい遊具をつくる」という姿勢以外に「子どもたちの将来にどう影響を与えるか」まで考えていると感じました。

―ほかの遊具で特徴はありますか。

堀田:計画時にはインクルーシブ遊具が全盛でしたが、山口市はこれから取り組むという段階でしたので、今までにない遊具にしようと意気込んでいました。そのなかで2階のデッキスペースに大型のインクルーシブ遊具を設置しました。結果的にガーデンファニチャー的な役割を担いながら1階との統一感も生まれ、建物としてのまとまりができたと感じています。

 

2階デッキのインクルーシブ遊具



多様な空間の使われ方


完成前には不安もあったとのことですが、実際に完成してからはいかがですか。

堀田:「多くの方々に楽しんでもらえるか」という不安はありましたが、今は非常に良かったと思っています。想像以上にいろいろな使われ方をしていますし、利用者の反応もとても良いです。

田中:施設自体の認知も上がり、地元の方はもちろん、県内外幅広く利用していただいています。3世代でお越しいただいたりしていますね。思っていた以上の評判があると実感しています。

市長から、ある自治体の市長が「これが新たな公共空間のあり方だ」と評価してくださったと、市長から聞いています。

―外部からの評判も高いと聞きました。

田中:公共施設なので建物自体に収益性は少ないのですが、他県の方がパークに興味を持ち山口に訪れることでの経済効果が期待できるかもしれません。民間からの引き合いも多く、特に自動車関連や住宅メーカーの展示会など、企業様からの利用相談が増えています。屋根がついていて天候を気にしなくてもよいなど、使いやすさを評価していただいています。

堀田:来場者数も半年で約20万人を突破しているようですね。今後さらに知名度が上がっていくのではないかと感じています。

玉井:弊社でも講演で事例紹介として活用させていただいています。さまざまなところから問い合わせをいただいています。

 

まちづくりのモデルとしての可能性


―施設や遊び場というものは、まちづくりにおいてどういう価値があると考えていますか。

田中:今は学校ですら十分に遊べる環境が少ない中で、まちなかにこうした場所があることは、まちの豊かさにつながると思います。山口市は人口減少という課題を抱えていますが、約一年運営してきて、このような「豊かさ」が人を呼び込む要素になる可能性があると感じています。

堀田:図書館と公共施設の複合はよくありますが、温泉と公共施設を組み合わせている点は特徴的です。小さな子どもを連れて気軽に行ける場所は意外と少ないので、市民に親しまれる施設になると感じています。

 

遊びがひらく、これからの公共空間


―今後、まちを豊かにするための公共施設や遊び場とはどういうものなのか。まちづくりとしてのビジョンをお聞かせください。

田中:白狐の遊具だけでなく、この施設は全体的に「決まり」や「制限」をなるべく設けないようにしているんです。もちろん最低限のルールは必要ですが、過度な規制をしないことが空間として大切だと思います。

堀田:施設運営は大変かもしれませんが、「ルールを決めすぎない」というのはとても大切だと思います。たとえば、「スリッパ卓球」のように、ルールに縛られないことで、自由な発想が新しい使い方を生み出します。用途を決めすぎないことで、地域とともに施設が成長し、愛着を持って使われ続けてほしいです。

―ありがとうございました。



 

湯田温泉 こんこんパーク

【場所】 山口県山口市湯田温泉5-2-15
【開館時間】 6:00~22:00(施設により異なる) ※芝生広場、噴水広場は常時開放
【休館日】 第1、第3火曜日(温浴施設は毎週火曜日)、年末年始(12月29日〜1月3日)
【アクセス】 当館から徒歩約5分/JR湯田温泉駅から徒歩約15分

 

 

 

 

 
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