子どものへや(トラフ×いわさきちひろ)


大きな麦わら帽子そのもののような 子どもの部屋」


生涯を通じて多くの子どもの姿を描いてきた画家、いわさきちひろ。彼女の生誕100周年を記念し、〈Life展〉と題して彼女の作品を展示する長野県と東京都の2館の美術館を中心に、特別な展示が行われました。この〈Life展〉でいわさきちひろの描く新たな世界へのアプローチを託されたアーティストの一組が建築家の鈴野浩一と禿真哉が率いるトラフ設計事務所です。「子どものへや」をテーマに、帽子に包まれながら、遊ぶようにいわさきちひろの世界を体験できる空間を目指し、スタードームという構造を応用して竹で編んだ直径5.5mもの大きな麦わら帽子型の作品を設置しました。


SUZUNO Koichi
Architect

禿真哉(かむろ しんや)とともに2004年にトラフ建築設計事務所を設立。建築の設計をはじめ、インテリア、展覧会の会場構成、プロダクトデザイン、空間インスタレーションやムービー制作への参加など多岐に渡り、建築的な思考をベースに取り組んでいる。主な作品に「テンプレート イン クラスカ」「空気の器」「ガリバーテーブル」など。2015年「空気の器」が、モントリオール美術館において、永久コレクションに認定。2014年~京都精華大学客員教授、2015年~立命館大学客員教授。

Images

Production story

BACKGROUND

トラフ設計事務所2人は「いわさきちひろさんの絵をじっくり見ていく中で、あまり、子どもの部屋の様子が描かれた作品は多くなかった。そのかわり、帽子を被った子どもの絵がたくさんあるのが印象に残り、もしかすると子どもたちにとっては、この帽子が、周囲の環境から自分を守ってくれる一つのちいさな空間、子どもの部屋なのではないかと思うようになった。」といいます。
いわさきちひろの絵では、大胆にとられた余白や、そこに広げられるにじみの色相によって、子どものいる空間を暗示させられることが多いといいますが、その中に描かれた帽子というモチーフには、親の愛情や、外の世界に飛び出す子どもの好奇心や不安感など、無意識にさまざまな感情を想像し投影して見てしまいます。服装の一つとして片づけるには、やっぱり気になる存在です。

INSIGHT

トラフ設計事務所の解釈のように、子どもたちの帽子が最小限の「子どものへや」だとするならば、その部屋は単に子どもを守るものや、子どもに与えるものではない。自ら外の世界にあそびに出かけていった数だけ、子どもたちの成長があり、その姿をしっかり見守るまなざしがあります。空間としての要素に関わらず、そうした環境が最良の「子どものへや」なのではないかと改めて考えさせられます。

HOW IT WORKS

会期中は地元の中学生ボランティアがワークショップを運営し、周囲の帽子のツバの部分でワークショップテーブルとして備え付けられた画材や用紙を使って、ちひろが描いた子どもの顔に帽子の絵を書き足して作品にしたり、水彩でにじみ技法の体験も行われました。作ったオーナメントは帽子全体に飾られ、帽子の中に入って床に仰向けになると、見上げる視界いっぱいに無数のオーナメントが揺れています。帽子の中ではお話の会も開かれたりと、多くの親子連れでにぎわいました。

 

DATA

「子どもの部屋」

所在地:長野県北安曇郡

設置年:2018年7月21日~9月25日(「Life展」開催期間中展示)

クライアント:安曇野ちひろ美術館

設計:トラフ建築設計事務所

施工:ジャクエツ

協力:九州フィールドワーク研究会

ワークショップ提供:ジャクエツ