「障がいの有無に関わらず誰もが遊ぶことができる遊具」の開発を医療と遊具の分野を越えて実現したプロジェクト。医療的ケア児の「遊びたくても遊べない」という課題に注目し、様々な個性をもつ子どもたち、医師、ケアスタッフ、遊具デザイナー、地域住民が携わり3つの遊具を開発。遊ぶきっかけが地域に増え幸せが広がる未来をつくる取り組み。
<プロジェクト概要の説明動画(4分)>
福井医科大学(現・福井大学)医学部卒業。福井県立病院、福井県内の診療所勤務を経て、2011年、在宅医療を専門に行う「オレンジホームケアクリニック」を開設。医療的ケア児の活動拠点「オレンジキッズケアラボ」や、地域の幼小中一貫校との連携による病児保育を中心とした在宅医療拠点「ほっちのロッヂ」を立ち上げるなど、数多くのプロジェクトを展開している。
Images
Production story
BACKGROUND
医療的ケア児を取り巻く現状として「3歳の子どもなのに友だちと一度も遊んだことがない」「遊ぶ機会が無く笑顔が少ない、ケアする人につくり笑顔をする」などあそびから遠いことをきっかけにつながりや感情の豊かさが乏しくなってしまうという課題があります。医療的ケア児は全国で約2万人いるとされ、外出や旅行ができている家族は17.2%にとどまっており(厚生労働省調査)。また、「やらないほうがいいでしょ」「行ったらダメ」といったような大人の過剰な思い込みがあそびを遠ざけている課題もありました。
INSIGHT
私たちは「遊びたくても遊べない」という課題に対し、遊具側から自分らしく遊べることや分けなくていいことの主張を試み、家と病院の往復から地域の遊び場に出るきっかけを作ったり、友だちと一緒に遊ぶための媒介になったりするような遊具の在り方を目指し、様々な個性を持つ子どもたちと一緒に遊具の開発を行うことであそび場の境界を溶かしたいと考えました。
SOLUTION
「最も重度な障がいをもつ子ども~健常とされる子どもまでを遊具の対象とする」ことをプロジェクトの軸に置くことで、「遊びたくても遊べない」という社会の障がいを減らし、自分らしく楽しいと感じられる世界を目標とした。開発をした3つの遊具は寝たきりの子が一人で乗ることができ、自分自身で動かせる僅かな力によって揺れのフィードバック感などを楽しめるよう設計している。その一方で健常とされる子も楽しい遊具であることも並行して検証し、障がい児専用にならないデザインとすることを徹底しました。また強い感覚刺激にも配慮をし、「色刺激の少ない淡い色を使用すること」「ネットなどの身体に食い込み痛いと感じる素材を使用しないこと」などの開発のルールづくりも行いました。
HOW IT WORKS
結果として、幼稚園、公園、商業施設など環境を問わず多くの遊具が設置され。障がい児の受け入れや対応方法に悩んでいた保育施設や行政の後押しにも繋がり始めています。